キャリア理論05|エリクソンの理論.2

キャリアに
アイディアを

働くためのアイテム

「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。

挑戦し続ける力

自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。

もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。

キャリア理論05|エリクソンの理論.2(アイデンティティ:同一性)

アイデンティティとは?

エリクソンが提唱した「アイデンティティ(同一性)」とは、自分が何者であるかという自己認識のことです。これは単なる自己紹介ができるという意味ではありません。過去の経験、現在の自分、そして未来への展望を統合し、自身の価値観、信念、人生の目的、そして社会的な役割などを一貫性のある形で理解し、受け入れている感覚を指します。言い換えれば、揺るぎない「自分らしさ」の感覚であり、個人の行動や選択の基盤となります。

エリクソンの心理社会的発達理論の中でも、特にキャリア形成と密接に関わるのが、青年期に中心となるこの「アイデンティティ(同一性)」の概念です。アイデンティティは、青年期に集中的に探求されますが、単なる一過性の自己認識に留まるものではありません。自身の過去、現在、未来を統合し、社会における自己の役割を確立していく生涯にわたるプロセスです。キャリア選択において、このアイデンティティの確立は極めて重要な意味を持ちます。

青年期の発達課題:アイデンティティ vs. アイデンティティ拡散<混乱>

エリクソンは、青年期(およそ12歳から18歳頃)における主要な発達課題を、「アイデンティティ(同一性)」と位置づけました。この時期、若者は身体的・精神的な変化に加え、社会的な期待や役割の変化に直面します。

アイデンティティ : 過去の経験、現在の自己像、そして将来の目標や役割を統合し、「自分は何者なのか」「何を信じ、どう生きていくのか」という明確な自己認識を形成するプロセスです。様々な可能性を探索し、自分自身の価値観や信念、能力、興味などを試行錯誤しながら見つけていきます。

アイデンティティ拡散<混乱> : アイデンティティの確立がうまくいかない状態を指します。自己の明確な方向性が見出せず、役割や価値観が定まらないため、将来への不安や混乱、無気力感に陥ることがあります。

この青年期の「アイデンティティの危機」は、まさにキャリアの方向性を決定づける上で極めて重要です。なぜなら、どのような仕事を選び、どのような働き方をするかは、「自分とは何か」という問いに対する具体的な答えとなるからです。

アイデンティティとキャリア選択の関連性

アイデンティティの確立は、以下の点でキャリア選択に深く影響します。

  1. 自己理解の深化 : 自身の強み、弱み、興味、価値観、資質などを深く理解することが、適切な職業選択の基盤となります。これは、単に「何ができるか」だけでなく、「何をしたいか」「何に意味を見出すか」という内面的な問いと向き合うことです。
  2. 目的意識の形成 : 「自分は将来、社会でどのような役割を担いたいのか」「どんな貢献をしたいのか」といった目的意識が明確になることで、具体的なキャリア目標を設定しやすくなります。
  3. 役割期待への適応と主体性 : 社会から期待される役割(例:学生、社会人、親など)を理解しつつも、それに流されることなく、自分らしい方法で役割を果たす主体性を育みます。キャリア選択においても、周囲の期待に応えるだけでなく、自身の意思に基づいて選択する力が養われます。
  4. キャリアの方向性決定 : 確立されたアイデンティティは、特定の職業分野や働き方への適合性を高めます。例えば、人を助けることに価値を見出す人は医療や福祉の道を、創造性を重視する人はデザインや研究の道を志すなど、自己理解がキャリアパスを形成します。

就職活動を行う大学生の皆様に

就職活動に臨む大学生の皆さんにとって、この期間は単に職を得るための活動以上の意味を持ちます。エリクソンの理論に照らし合わせると、まさに「アイデンティティ」に直結する重要なプロセスと言えます。

この時期に集中的に行う自己分析は、自身の価値観、興味、能力、そして働き方の志向を明確にする絶好の機会です。こうした自己理解を深めることで、「自分は何者なのか、何に情熱を感じ、どんな貢献をしたいのか」という、揺るぎない自己認識が育まれます。この明確なアイデンティティが形成されると、周りの情報や他者の意見に流されることなく、心から納得できる「自分らしいキャリア」を選択する準備が整います。

青年期に確立されたアイデンティティは、最初の職業選択にとどまらず、入社後の職場での人間関係の築き方や、将来のキャリア展望にも大きな影響を与えます。一方で、アイデンティティが曖昧なままだと、職業選択に迷いや不安がつきまといやすくなります。結果として、入社後に「こんなはずではなかった」というミスマッチが生じたり、キャリアの停滞につながったりする可能性も出てきます。

エリクソンは青年期から成人期への移行期における期間を「モラトリアム(猶予期間)」と呼び、この期間における多様な経験の重要性を指摘しています。学業だけでなく、留学、長期アルバイト、ボランティア活動、サークル活動など、様々な経験を通じて、自分の適性や興味を探り、多角的に自己理解を深めることが、アイデンティティの確立に大きく寄与します。就職活動を、このモラトリアム期間の集大成と捉え、自身のアイデンティティを確立する貴重な機会として最大限に活用してください。

転職を考えている社会人の皆様に

エリクソンは、「アイデンティティ」の確立は青年期で完結するものではないと考えていました。むしろ、私たちは人生の各段階で新たな役割や経験に直面するたびに、アイデンティティを継続的に再構築していくものと捉えられます。

社会人の皆さんにとって、このアイデンティティの再確認は、キャリアの再構築に欠かせません。もし、現在の職場に違和感を感じたり、キャリアの停滞を感じていたりするならば、それは自身のアイデンティティと現在の状況との間にずれが生じているサインかもしれません。この時こそ、「自分は何を大切にしたいのか」「どんな働き方が自分に合っているのか」「社会にどう貢献したいのか」といった問いを再び見つめ直すことが、新たなキャリア選択の重要なヒントになります。

エリクソンは、青年期以降も以下のような発達課題がアイデンティティを土台として展開されると示しました。

成人前期<初期成年期>:親密性 vs. 孤独 この時期は、職場や家庭において他者との深い関係性を築き、親密性を育むことが求められます。青年期に確立されたアイデンティティがしっかりしていると、他者との安定した人間関係を築きやすく、それがキャリアにおける持続的な成長や満足度にも影響を与えます。例えば、チームでの協働や後輩指導なども、この親密性の延長線上にあります。

成人期<壮年期>:世代性 vs. 停滞性 キャリアの中核を担うこの時期には、仕事や家庭、社会への貢献を通じて「世代性」を実感することが重要なテーマとなります。自身のアイデンティティが明確であれば、これまでの経験や強み、そして使命感を活かしながら、より大きな責任を担ったり、次世代を育成したりすることで、キャリアの中で深い充実感を得ることができます。

老年期:統合性 vs. 絶望 キャリアの終盤、あるいは引退後のこの時期には、これまでの人生やキャリアを振り返り、その意味や満足感を見出す「統合性」が求められます。青年期以降、各段階でアイデンティティをしっかりと築き、更新してきた人ほど、自身のキャリアの歩みも一貫性を持ち、人生全体にわたる統合感や納得感を得やすくなります。

このように、エリクソンの理論は、キャリアが一生涯にわたるアイデンティティの探求と再構築の旅であることを示唆しています。変化の激しい現代において、定期的に自身のアイデンティティを問い直し、キャリアを見つめ直すことが、充実した職業人生を送るヒントです。

Take-Home Message

エリクソンの提唱する「アイデンティティ:同一性」は、単に青年期の危機を象徴する概念にとどまりません。それは、それは、生涯にわたる自己形成のプロセスそのものであり、人生の各段階における発達課題の基盤となります。

青年期に確立されたアイデンティティは、成人前期における「親密性」を育む人間関係、壮年期における「生産性」を通じた社会貢献、そして老年期における「統合感」へと深くつながり、私たちのキャリアの質と満足度に決定的な影響を与えます。

つまり、キャリアとは、自己理解を深め、社会における自身の役割を統合していくことによって築かれる「人生の物語」だと言えます。エリクソンの理論は、その物語をどのように紡ぎ、より豊かにしていくかを示す、強力な羅針盤となるはずです。

次回は、エリクソンの「個体発達分化」において、特に青年期で確立されたアイデンティティを基盤に、成人前期で個人がどのように多様な社会的・職業的関係性を築き、自己をさらに発展させていくのかを、具体的な視点から掘り下げていきます。
※乳児期から学童期までの発達課題とその後のキャリアへの間接的な影響についても参考内容として取り上げます。

この記事を書いた人

プロフィール

May 2022~

HCC Japan LLC

CEO

March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

会社概要
-COMPANY PROFILE-

\ようこそ/
HCCジャパンの提案

歴史は人がつくる
人は歴史をつくる

いらすと
すてーしょん

"いらすとすてーしょん"は独自のタッチで描いた

フリーイラストポートレートと歴史の停車場の提供を

通じて世代を繋ぐ遺産として、そして未来への脈動を

提案します