キャリア理論08|ニコルソンの理論.3

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「キャリア理論08」では、ナイジェル・ニコルソン(Nigel Nicholson・London Business School)の理論をもとに、新しい役割に移行する際の「自己と役割の再設計」に焦点を当て、全4回でお届けします。

キャリア理論08|ニコルソンの理論.3(役割への関わりと自己の解釈)

前回の振り返り:役割と自己の再設計

前回(ニコルソンの理論.2)では、役割移行時の4つの適応パターン(Absorption/Replication/Exploration/Determination)を紹介しました。これらのスタイルは、以下の2つの軸の組み合わせで決定されます。

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定義高い状態低い状態
役割への関わり(Engagement)新しい役割にどの程度積極的に関与し、試行錯誤するか。能動的に挑戦し、行動を起こす受動的で、行動が限定的
自己の解釈(Interpretation)新しい役割に合わせて、自分自身をどの程度変えようとするか。自己を根本的に変える意欲がある既存の自分を維持しようとする

今回は、この2軸を深掘りし、キャリア成長における理想的な組み合わせと注意点を考えます。

キャリア成長への影響:理想と注意点

この2軸の組み合わせは、キャリア成長の質と速度を決定します。

理想的な成長パターン:Absorption(高関わり x 高解釈)

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スタイル組み合わせ特徴と成長の鍵
Absorption高 Engagement x 高 Interpretation最も創造的なキャリア成長をもたらします。役割に没頭しつつ、自己も役割に合わせて革新するため、新しいアイデンティティとスキルが確立されます。ただし、過剰な没入は燃え尽きのリスクがあります。

避けるべき「落とし穴」のパターン

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スタイル組み合わせ避けるべき点とリスクポイント
Replication高 Engagement x 低 Interpretation短期的な成果は出やすいが、過去のやり方や成功体験に固執し、変化の激しい環境では成長が停滞しやすい。過去の成功は、新しい環境での学習を妨げる最大の壁となり得ます。過去の成功体験に固執せず、柔軟性を意識する。
Exploration低 Engagement x 高 Interpretation内省的な学習で将来の飛躍を準備しますが、行動が遅れると機会を逃します。学び続ける一方で、行動に伴うフィードバックが得られないため、成長が観念的になりやすい。観察と学習を続けながら、小さな行動を積み重ねる。
Determination低 Engagement x 低 Interpretation適応が最も遅れ、キャリア停滞のリスクが極めて高いパターンです。不満や諦念から生じやすく、長期化すると組織からの不必要な離脱を招きます。まずは「小さな一歩」を設定し、行動を起こす。

セルフチェック

1. 役割への関わり(Engagement)に関する問い

あなたの新しい役割への「行動的な姿勢」について、以下の問いに答えてみてください。

  • あなたは、新しい役割に必要な知識やスキルについて、積極的に質問したり、情報収集をしたりしていますか?それとも、指示された範囲内で留まっていますか?
  • 失敗や周囲からの評価を恐れず、新たな方法やプロセスを試みるなど、能動的な挑戦をしていますか?それとも、リスクを避け、行動が限定的になっていますか?
  • 積極的に試行錯誤していると感じるなら、Engagement軸は高いと言えます。行動が受動的になっているなら、Engagement軸は低い傾向があります。

2. 自己の解釈(Interpretation)に関する問い

あなたの新しい役割への「認知的な姿勢」、すなわち「自己変革への意欲」について、以下の問いに答えてみてください。

  • あなたは、新しい役割の要求に合わせて、自分自身の価値観や振る舞いを根本的に変えようと意識していますか?それとも、「自分はこういう人間だ」という過去のアイデンティティを維持しようと固執していますか?
  • 過去の成功体験やスキルに頼りすぎず、根本的に新しい能力を身につけようと柔軟に自己を再構築しようとしていますか?それとも、通用しないと分かっていても、慣れたやり方を繰り返そうとしていますか?
  • 根本的な自己変革への意欲があるなら、Interpretation軸は高いと言えます。既存の自分を維持しようとしているなら、Interpretation軸は低い傾向があります。
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あなたの傾向対応するスタイルと指針
高 Engagement x 高 InterpretationAbsorption(役割創出):理想的な成長ゾーンです。この意欲を維持しつつ、燃え尽きを防ぐための境界線を意識的に設定しましょう。
高 Engagement x 低 InterpretationReplication(役割定着):行動力はありますが、柔軟性が不足しています。過去の成功に固執せず、新しい視点を取り入れるための内省を加えましょう。
低 Engagement x 高 InterpretationExploration(役割模索):学習意欲は高いですが、行動が不足しています。内省を維持しつつ、小さな挑戦を設定し、「準備」から「実行」へ移行しましょう。
低 Engagement x 低 InterpretationDetermination(役割受動):キャリア停滞のリスクがあります。現状を打破するため、まずは役割への不満を解消する小さな一歩(例:同僚に相談する、役割の目的を再確認する)から行動を起こしましょう。

Take-Home Message

キャリア成長の鍵は、役割への積極的な関わり(Engagement)と、必要に応じて自己を柔軟に変える解釈(Interpretation)の意図的なバランスにあります。理想は高いEngagement × 高いInterpretation」のAbsorption(役割創出)スタイルで創造的な成長を追求することです。しかし、スタイルは固定ではなく、状況やライフステージに応じて意識的に調整することが重要です。

最も避けるべきは、Replication(過去のやり方への固執)による硬直化や、Determination(受動性)による停滞です。

転機に際しては、「どの軸を強化すべきか」をセルフチェックで確認し、意図的に行動(Engagement)と変革(Interpretation)のレベルを選択することが、あなたのキャリアを能動的にデザインする鍵となります。そして(Determination)を防ぐことが、安定的な成長に繋がります。

次回は、「キャリア理論09|ニコルソンの理論.4(セルフワークと支援戦略)」として、各軸を意図的に強化するための具体的な行動戦略と、「今の自分に必要な支援」を見立てる方法、そして就活生・成人前期・中年期別の支援事例ご紹介します。さらに、このシリーズの締めくくりとして、「人生の転機(トランジション)の捉え方」を総括し、ブリッジズ理論との接続を示します。

この記事を書いた人

プロフィール

May 2022~

HCC Japan LLC

CEO

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

会社概要
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