キャリア理論09|シュロスバーグの理論.3


キャリアに
アイディアを

働くためのアイテム

「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。

挑戦し続ける力

自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。

もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。

Information

「キャリア理論09」では、ナンシー・K・シュロスバーグ(Nancy K. Schlossberg)の理論(4Sモデル)を通じて、人生の転機を乗り越えるための4つの資源(Situation・Self・Support・Strategies)に焦点を当て、キャリア選択や適応を支える実践的な方法を探ります。

キャリア理論09|シュロスバーグの理論.3(支援-支援ネットワークをどう活用するか-)

前回の振り返り

前回(シュロスバーグの理論.2)では、4Sモデルのうち「状況(Situation)」と「自己(Self)」を取り上げました。そして、転機の背景を客観的に整理し、自分自身の内なる資産(価値観や経験)を理解することが、変化を乗り越えるための「最初のチェックポイント」になることを確認しました。

今回は、変化の荒波の中で孤立を防ぎ、あなたを支える強力な外部資源「支援(Support)」について深掘りします。

支援(Support):4つの支援リソース

シュロスバーグの理論では、転機を乗り越える際に私たちが利用できる支援を大きく4つのカテゴリーに分類しました。いま、あなたにとって、どこに「助け」があるかを振り返ってください。

  • 親密な関係(Intimate Relationships)
    配偶者やパートナー、親友など、ありのままの自分を受け入れてくれる存在。
  • 家族単位(Family Units)
    親、兄弟、子供など、生活を共にしたり、長期的な絆で結ばれたネットワーク。
  • 友人ネットワーク(Friendship Networks)
    共通の趣味や価値観を持ち、共感や情報交換ができる仲間。
  • 職場・コミュニティ(Institutions and Communities)
    上司、同僚、地域社会、専門家(キャリアコンサルタント等)など、特定の役割や目的で繋がる組織。

支援の「質」を見極める

単に「人が周りにいるか」だけではなく、その支援が今の自分にとって「適切な質」であるかどうかが重要です。シュロスバーグは、カーンとアントヌッチの「コンボイ(護送船団)」の考え方をもとに、支援が果たす働きを4つに整理しています。

  • 情緒(Affect)
    好意や安心感を与えてくれるもの(「大変だったね」という共感など)。
  • 肯定(Affirmation)
    「あなたの考えややり方は間違っていない」と認めてくれるもの。
  • 援助(Aid)
    お金、時間、家事の分担、作業の代行など、具体的な手助け。
  • 率直なフィードバック(Honest Feedback)
    耳の痛いことも含めて、正直に伝えてくれるもの。

なお、心理学では支援を「情緒的支援」「情報的支援」「道具的支援」の3つに分ける方法もよく使われます。これは一般的なソーシャルサポート研究の分類で、上の4つがシュロスバーグ自身の整理です。

Success

踏み込みポイント
転機の種類によっては、家族には「情緒」や「肯定」を求め、信頼できる同僚や専門家には「率直なフィードバック」や具体的な情報を求めるといった、リソースの使い分けが心の負担を軽くします。

支援への「アクセス」を阻む壁を壊す

「支援があるのに頼れない」という状況はよく起こります。「迷惑をかけたくない」「自分一人で解決すべきだ」という思い込みが、支援(Support)という強力な資源を封印してしまいます。自分から支援を求めることも、転機への大切な対処の一つです。ここでは、シュロスバーグの理論の外にある心理学の知見から、それを後押しする3つの視点をご紹介します。

  • ヘルプシーキング(援助要請)→高度なビジネススキル
    心理学では、適切に助けを求めることは依存ではなく、高度な問題解決スキルです。自立とは何でも一人で行うことではなく、「誰に何を頼めば解決するかを知っていること」。支援を求めることは、相手に「信頼」を伝える高度なコミュニケーションです。
  • 心理的安全性→レジリエンス(回復力)の源
    「弱みを見せても拒絶されない」と信じられる状態を、心理学では「心理的安全性」と呼びます(もともとは、チームの中で共有される感覚を指す言葉です)。こうした関係の中では、困ったときに声を上げやすくなり、立ち直る力も支えられます。小さな相談を重ねることは、相手との間にそうした安心感を育てることにもつながります。
  • ベンジャミン・フランクリン効果→頼ることは「アイテムの一つ」
    助けを求めることは「迷惑」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。助けを引き受けた人は、その行動と気持ちのつじつまを合わせるように、相手への好意を強めることが知られています(ベンジャミン・フランクリン効果)。適切に頼ることは、関係性を深めるポジティブな循環を生む「アイテムの一つ」です。

Take-Home Message

「独りで戦うことだけが強さではない。賢く頼ることも、立派な戦略である」

大きな転機の真っ只中にいるとき、人はしばしば「自分だけの問題だ」と殻にこもりがちです。しかし、周囲の支援ネットワークは、あなたが再び立ち上がるための「セーフティネット」であり、前へ進むための「エンジン」でもあります。

今の自分に必要な支援は「安心感(情緒)」なのか、「認めてもらうこと(肯定)」なのか、「具体的な手助け(援助)」なのか、それとも「率直なフィードバック」なのか。それを特定し、手持ちのアイテム(支援を求めるスキル)を少しだけ使ってみることから、支援(Support)という資源の活用が始まります。

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セルフワーク
あなたの「支援マップ」を描いてみませんか

1. 書き出し
4つのカテゴリー(パートナー、家族、友人、組織)ごとに、頼れそうな人や場所の名前を書き出します。
2. 質の評価
その人たちから、今どのような助け(情緒・肯定・援助・率直なフィードバック)がもらえそうですか、あるいは「欲しい」ですか?
3. アクション
今週、支援マップの中の一人にだけ、今の状況を「少しだけ」話してみる約束(アポイント)を入れましょう。

問いかけ
あなたの支援マップの中に、「あなたが助けることで喜んでくれる人」はいませんか? あなたが頼ることは、その人にとっての「喜び」というアイテムになるかもしれません。

次回は、「キャリア理論09|シュロスバーグの理論.4(戦略-問題修正・意味づけ変更・ストレス対処-)」として、4Sの最後、これまでの資源を総動員して具体的にどう動くかという戦略(Strategies)について深掘りします。

この記事を書いた人

プロフィール

May 2022~

HCC Japan LLC

CEO

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

会社概要
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