キャリア理論08|ニコルソンの理論.4

キャリアに
アイディアを

働くためのアイテム

「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。

挑戦し続ける力

自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。

もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。

Information

「キャリア理論08」では、ナイジェル・ニコルソン(Nigel Nicholson・London Business School)の理論をもとに、新しい役割に移行する際の「自己と役割の再設計」に焦点を当て、全4回でお届けします。

キャリア理論08|ニコルソンの理論.4(セルフワークと支援戦略)

前回の振り返り

前回(ニコルソンの理論.3)では、キャリア成長の鍵が「役割への関わり(Engagement)」と「自己の解釈(Interpretation)」のバランスにあることを確認しました。理想は両軸の高いAbsorptionスタイルですが、状況に応じて意図的にどちらかの軸を強化することが、停滞を避ける戦略となります。

参考まで、このシリーズの概要は下記の通りです。
ニコルソンの理論.1:ニコルソンの理論の概要と「自己と役割の再設計」
ニコルソンの理論.2:4つの適応パターン(Absorption/Replication/Exploration/Determination)
ニコルソンの理論.3:2つの軸(役割への関わり × 自己の解釈)から理想的な組み合わせと注意点

今回は、この2つの軸を強化するための具体的な行動戦略と、ライフステージごとの支援策を紹介します。

軸を強化するための具体的な行動戦略

前回までのセルフチェックの結果、不足していると感じた軸を意図的に高めるための具体的な行動を以下に示します。

強化戦略 A:役割への関わり(Engagement)を高める

関わり(Engagement)が低い(ExplorationやDeterminationの傾向がある)場合、行動を通じてフィードバックを得る機会を増やします。

  • 「3の法則」の実践: 新しい役割について、最低でも3人の異なる視点を持つ人(上司、同僚、他部署)に意見や質問をする。情報収集を受動的に終わらせず、能動的な交流に変えます。
  • クイックウィン(Quick Win)の設定: 成功体験による自信(自己効力感)を高めるため、すぐに達成できる小さな目標を設定し、着実に実行します。これにより、行動への心理的障壁を下げます。
  • 行動実験(Action Experiment): 完璧を目指さず、「とりあえずやってみる」姿勢を意識します。新しい方法やプロセスを短期間だけ試す行動実験を行い、失敗から学習する機会を増やします。

強化戦略 B:自己の解釈(Interpretation)を高める

解釈(Interpretation)が低い(ReplicationやDeterminationの傾向がある)場合、自己の価値観やスキルを客観視し、変革の必要性を内省します。

  • 「役割の解体」ワーク: 現在の役割に必要な**「スキル」と「個人的価値観」をリストアップし、「このうち、過去のやり方に固執しているものは何か?」を批判的に検討します。
  • メンター・コーチングの活用: 異なった価値観を持つ社外のメンターやコーチと対話することで、既存の自己の前提を揺さぶり、自己変革の必要性を客観的に認識します。
  • 未来のアイデンティティ設定: 5年後の理想の役割ではなく、「新しい役割を完全に消化した自分」の振る舞いや考え方を詳細にイメージし、現状とのギャップを埋めるための学習計画を立てます。

ライフステージ別:必要な支援の見立て

ニコルソンの理論は、「今の自分に必要な支援」を見立てる強力なツールとなります。ライフステージによって直面する課題が異なるため、取るべき支援戦略も変わります。

ライフステージ転機の主要課題陥りやすいパターン必要な支援戦略支援ツール
就活生学生→社会人への役割同一化Replication(過去の価値観の固執)企業文化や職業倫理に関する明確な情報提供(Engagement向上)。ロールモデルとの対話を通じた自己理解(Interpretation向上)。OJT体験プログラム (Engagement強化)、メンター制度 (Interpretation支援)、キャリア対話ワークシート (自己解釈)
成人前期(〜45歳)役割の獲得と昇進Absorption(燃え尽きリスク)ワークライフバランスや心理的安全性の確保。役割を「どうこなすか」から「どう創造するか」への視座を高める教育(Interpretation向上)。境界線リスト (Engagementの質の最適化)、リーダーシップ研修 (Interpretation向上)、心理的安全性チェックリスト (環境整備)
中年期(45〜65歳)役割の再定義(管理職→専門職など)Replication(過去の成功体験への固執)客観的な能力評価(解釈の必要性を認識)。異分野学習の機会や、社外メンターによる新しいキャリアの選択肢提示(EngagementとInterpretationの両方向上)。スキル棚卸しツール、(Interpretation強化)、異業種交流会 (EngagementとInterpretation向上)、キャリア再設計ワークブック (変革の計画)

セルフワーク:ニコルソン理論に基づくキャリア行動計画

このセルフワークは、あなたの役割移行スタイルを意識し、成長につながる「順応(Adjustment)」の学習サイクルを意図的に回すことを目的とします。

  1. 現状分析(スコアの確認):
    • あなたの現在のEngagementスコアとInterpretationスコアを確認します。
    • 結果から、あなたが停滞を避けるために、今最も強化すべき軸(Engagement または Interpretation)を決定します。
  2. 行動の決定(戦略の選択):
    • 上記の「強化戦略」から、強化すべき軸に対応するアクションを今週実行可能なものとして1つ選びます。
    • アクションを具体的な目標(例:〇〇さんに〇〇について質問する)に変え、手帳やワークシートに記録します。
  3. 内省と継続(学習サイクルの確立):
    • アクション実行後、その結果やプロセスで得られた「気づき」を必ず追記します。
    • この気づきを基に、次週の新しいアクションを決定し、成長のサイクルにつなげます。

Take-Home Message

キャリア成長の鍵は、役割への積極的な関わり(Engagement)と、必要に応じて自己を柔軟に変える解釈(Interpretation)の意図的なバランスにあります。

理想は「高いEngagement × 高いInterpretation」のAbsorption(役割創出)スタイルで創造的な成長を追求することです。このシリーズで学んだように、役割移行のサイクル(準備→遭遇→順応→安定化)を意識し、転機に際して「どの軸を強化すべきか」をセルフチェックで確認しましょう。受動的なDeterminationを防ぐためにも、強化すべき軸に基づいた「今日からできる小さな行動」を積み重ねること。これこそが、転機を学習と成長のサイクルに変える、最も実践的な戦略となります。

このニコルソンの理論のシリーズでは、就職、昇進、転職、異動といった役割の変化を、自己と役割の関係を再設計する学習機会として捉える視点をお届けしました。今回のニコルソンの理論が「転機にどう行動するか(戦略)」に焦点を当てたのに対し、次回のシリーズでは、その転機を乗り越えるための「リソース(資源)」の視点に移ります。

そこで、次回は「キャリア理論09|シュロスバーグの理論(人生の転機を乗り越える4Sモデル)」として、転機を乗り越えるための「自己、状況、支援、戦略」という4つの資源(4S)の視点から、より総合的なキャリア転機への対処法をお届けします。ニコルソン理論で学んだ「戦略」を補完する「リソースの管理」を、次回のシリーズで深掘りしていきましょう。

この記事を書いた人

プロフィール

May 2022~

HCC Japan LLC

CEO

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

会社概要
-COMPANY PROFILE-

\ようこそ/
HCCジャパンの提案

歴史は人がつくる
人は歴史をつくる

いらすと
すてーしょん

"いらすとすてーしょん"は独自のタッチで描いた

フリーイラストポートレートと歴史の停車場の提供を

通じて世代を繋ぐ遺産として、そして未来への脈動を

提案します