キャリア理論05|エリクソンの理論.1
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「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。
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キャリア理論05|エリクソンの理論.1(心理社会的発達理論)
エリクソンって?
エリク・H・エリクソン(Erik H. Erikson, 1902–1994)は、ドイツに生まれ、後にアメリカで活躍した心理社会的発達理論を提唱した心理学者です。彼は、精神分析の祖フロイトの理論を土台としつつも、それを大きく発展させ、人間の発達を誕生から死に至るまでの一連の「心理社会的プロセス」として捉え直しました。
ちなみに、エリクソンが心理学界を超えて、社会全体に最も大きな貢献をしたのは、「アイデンティティ(同一性)」という概念を体系的に提唱し、その重要性を広めたことです。エリクソンは、特に青年期において、個人が「自分は何者か」「どのように生きていくのか」という問いと向き合い、自分自身の役割や価値観を統合していく過程を「同一性の危機」として明確に位置づけました。この危機を乗り越えることが、その後の人生を歩む上で不可欠な自己の確立に繋がると説いたのです。
※アイデンティティについては次回「エリクソンの理論.2」で取り上げます。
ライフサイクルにおける発達段階
エリクソンの理論では、個人の発達を「生涯にわたるプロセス」として捉え、発達は乳児期から老年期まで続く「ライフサイクル」として捉えられます。各段階には、その時期に直面する特定の「心理社会的危機」、つまり乗り越えるべき課題が設定されています。これらの課題は、二項対立する概念で表現され、その対立を乗り越えることで、個人の精神的な成長が促されます。以下に、エリクソンが提唱した8つの発達段階とその主要な課題を示します。
Ⅰ 乳児期:信頼 vs. 不信
Ⅱ 幼児期前期:自律性 vs. 恥、疑惑
Ⅲ 幼児期後期:自発性 vs. 罪悪感
Ⅳ 学童期:勤勉性 vs. 劣等感
Ⅴ 青年期:アイデンティティ vs. アイデンティティ拡散<混乱>
Ⅵ 成人前期<初期成年期>:親密性 vs. 孤独
Ⅶ 成人期<壮年期>:世代性 vs. 停滞性
Ⅷ 老年期:統合性 vs. 絶望
これらの課題は、単なる年齢的な区分ではなく、人生の中で繰り返し現れる可能性がある「発達のテーマ」として理解されています。それぞれの段階での課題解決が、次の段階の健全な発達に影響を与え、個人のキャリア形成や生き方全体に深く関わってきます。
※この8つの段階からなる心理社会的発達は「エリクソンの理論.3・4」で取り上げます。
キャリア理論への示唆
エリクソンの心理社会的発達理論は、キャリアを単なる職業の選択や職務経歴としてではなく、「人生の発達課題の一部」として捉える重要な視点を提供します。私たちのキャリアは、生涯にわたる自己形成のプロセスであり、各発達段階で直面する心理社会的危機と密接に連動しています。たとえば、青年期の「アイデンティティの確立」は、職業選択や進路決定に深く関わります。また、壮年期の「生産性」は、仕事を通じた社会貢献や自己実現と密接に関連しています。
つまり、エリクソンの理論は、キャリアを人生の各段階における発達課題と連動した「自己形成のプロセス」として位置付けています。職業選択やキャリアパスは、個人の心理的な成長と分かちがたく結びついており、キャリアを考えることは、人生全体を考えることに他ならないという示唆を与えてくれます。
※アイデンティティについては次回「エリクソンの理論.2」で取り上げます。
就職活動を行う大学生の皆様に
就職活動に臨む大学生の皆さんにとって、エリクソンの心理社会的発達理論は、「自分らしいキャリア」を考える上で非常に重要なヒントを与えてくれます。皆さんが今まさに迎えている青年期は、エリクソンがその生涯発達理論の中心に据えた「アイデンティティ(同一性)の確立」がテーマとなる時期だからです。
この時期は、「自分は何者なのか?」「将来、どのように生きていきたいのか?」といった問いと深く向き合う大切な期間です。就職活動は、単に企業に応募したり、内定を得たりするだけではありません。むしろ、この時期に徹底的な自己分析を行い、自身の興味、強み、弱み、そして最も大切にしたい価値観を整理することが、「自分らしいキャリア」を築くための第一歩となります。
自分がどんな人間で、どんな環境で最も力を発揮できるのか、どんな仕事に意味ややりがいを感じるのかを探るプロセスは、まさにアイデンティティを確立する過程そのものです。この探求を通じて、皆さんのキャリア選択はより質の高いものになり、表面的な情報に流されることなく、心から納得できるキャリアを発見することがより可能になるはずです。
転職を考えている社会人の皆様に
転職を考えている社会人の皆さんにとっても、エリクソンの心理社会的発達理論は、自身のキャリアを深く見つめ直し、「キャリアの再評価」を行う上で非常に有効な視点を提供します。特に、多くの社会人の方が経験する成人期<壮年期>に差し掛かると、エリクソンが提唱した「世代性 vs. 停滞性」が重要な発達課題として浮上してきます。
この「世代性」とは、単に子孫を残すことだけでなく、次世代の育成、後進の指導、あるいは仕事を通じて社会に貢献し、価値を生み出すことを指します。今の仕事に本当にやりがいを感じられているでしょうか? 自身の知識、経験、スキルが、組織や社会の中で十分に活かされていると感じられますか?
もし、現在のキャリアに停滞感を感じたり、自身の貢献が限定的だと感じたりしているのであれば、それは「世代性」の課題に直面しているサインかもしれません。この時期に自身のキャリアを見直すことは、単なる条件の良い職場への移動ではなく、「自分の価値をどこで最大限に活かし、どう社会に貢献していくか」という、より本質的な問いへの答えを探すプロセスとなります。
Take-Home Message
エリク・H・エリクソンが提唱した心理社会的発達理論は、キャリアを単なる職業の選択や職務経歴としてではなく、「人生の発達課題」として捉える重要な視点を提供します。私たちは人生の各ライフステージにおいて、固有の心理社会的危機に直面し、それを乗り越えることで、より成熟した自己を育んでいきます。そして、この自己形成のプロセスが、私たちのキャリア形成と密接に結びついています。
各段階の課題を乗り越えることは、結果として充実したキャリアを築き、より豊かな職業人生を送ることへと繋がります。キャリアとは、まさに生涯にわたる自己探求と成長の旅路であり、エリクソンの理論は、その旅を進めるうえでの道しるべと期待できます。
次回は、エリクソン理論の中でも特にキャリア選択に深く関わる「アイデンティティ(同一性)」の概念に焦点を当てます。これは、青年期の危機を表す用語であると同時に、生涯にわたる自己形成のプロセスとして、私たちのキャリアにどのように影響を与えるのかを詳しく掘り下げていきます。

この記事を書いた人
プロフィール
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Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry
Eli Lilly Japan K.K.
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Sales Operator
Waseda University in School of Human Sciences (e-school)
Human Informatics and Cognitive Sciences
Waseda University Senior High School
Teaching Assistant (Information Technology)
Waseda University School of Human Sciences
Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)
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