キャリア理論05|ハヴィガーストの理論.1
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キャリア理論05|ハヴィガーストの理論.1(発達課題とキャリア形成の関係性)
ハヴィガーストって?
ロバート・J・ハヴィガースト(Robert J. Havighurst, 1900-1991)は、アメリカの心理学者・教育学者で、人間が一生を通じて達成すべき発達課題(Developmental Tasks)という概念を提唱したことで知られています。ハヴィガーストは、個人の発達を単なる生物学的な成長として捉えるのではなく、特定の年齢や社会文化的な環境において、個人が達成すべき行動や役割に焦点を当てました。
ハヴィガーストの理論は、前回04でお示ししたエリクソンの理論と対比されながらも、キャリア形成においては互いを補完する関係にあります。エリクソンが内面的な葛藤や自己認識に焦点を当てたのに対し、ハヴィガーストは具体的な社会的・実践的な行動目標を明確にしました。例えば、青年期には「職業の選択と準備」、壮年期には「仕事に就くこと」「家庭の管理」といった、達成すべき現実的な課題を提示し、これらの課題をうまく乗り越えることが、個人の幸福と社会への適応を促すと説きました。つまり、ハヴィガーストの理論は、特に教育やキャリアカウンセリングの分野で広く活用されており、人生の各段階で「いつ、何をすべきか」という具体的な行動指針を考える上で重要な視点を与えてくれます。
壮年期以降の3つのライフステージにおける発達課題
ハヴィガーストは、乳幼児期、児童期、青年期、壮年期、中年期、老年期の6つの発達段階ごとに具体的な発達課題を示しました。その中から今回は、壮年期、中年期、老年期にフォーカスします。ハヴィガーストの理論は、生涯にわたるキャリア形成を、これらの発達課題を達成していく連続的なプロセスとして捉えています。
壮年期:個人が自立した生活を築き、社会的な役割を獲得していく時期
中年期:社会の中心的な役割を担い、次世代への支援を行う時期
老年期:これまでの人生を振り返り、新たな生活に適応していく時期
この3つのライフステージにおける発達課題については、次回以降3回にわけてお届けします。
では、これまでのハヴィガーストの各発達段階が、どのようにキャリア形成と結びつき、私たちの職業人生に影響を与えているのかを詳しく見ていきましょう。
ハヴィガースト理論とキャリア形成の接点
ハヴィガーストの発達課題という概念は、キャリア形成において、とても実践的な示唆を与えてくれます。キャリアを「点」ではなく「線」として捉えることで、私たちは仕事に対する見方や向き合い方をより豊かにすることができます。そこで、ハヴィガーストの理論とキャリア形成における接点は以下のように考えることができます。
キャリアの停滞や迷いを「成長の機会」として捉える
ハヴィガーストは、人生の各段階で直面する課題は、乗り越えるべき「タスク」であると説いています。もしキャリアに行き詰まりを感じたとき、それは単なる失敗ではなく、そのライフステージで達成すべき発達課題に直面している可能性があります。この視点を持つことで、私たちはキャリアの停滞や迷いを、次の段階へ進むための成長の機会として前向きに捉えることができるのです。
キャリアは自己成長のプロセスである
ハヴィガーストの理論における発達課題は、仕事や家庭、社会との関わりを通じて達成されます。したがって、キャリアは単なる職業選択や収入を得る手段ではなく、これらの発達課題の達成を通じた自己成長のプロセスそのものです。仕事を通じて新しいスキルを身につけたり、社会的な役割を果たしたりすることは、自身の発達を促す重要な要素となります。
ライフステージに応じてキャリアに求められる役割や価値は変化する
ハヴィガーストは、壮年期、中年期、老年期でそれぞれ異なる発達課題を挙げています。これは、キャリアに求められる役割や価値が、年齢やライフステージによって変化していくことを示唆しています。たとえば、壮年期にはキャリアの基盤を築くことが中心となりますが、中年期には後進の育成や社会への貢献が重要になります。そして老年期には、仕事から離れた新しい役割を見出すことが課題となります。この変化を理解することで、私たちはキャリアをより柔軟に、そして主体的に設計(デザイン)していくことができます。
エリクソン理論との違いと補完関係
ハヴィガーストとエリクソンの理論は、どちらも生涯にわたる人間の発達を段階的に捉える点で共通していますが、その焦点、課題の性質、キャリアとの接点において重要な違いと補完関係があります。
ハヴィガーストの理論
- 焦点は、特定の年齢や社会文化的な環境において、個人が達成すべき行動や役割です。
- 課題の性質は、社会的・実践的です。例えば、青年期には「職業の選択と準備」、壮年期には「仕事に就くこと」「家庭の管理」といった、具体的な行動目標や社会的責任が課題として挙げられます。これらの課題を達成することで、幸福な発達が促されると考えています。
エリクソンの理論
- 焦点は、各発達段階で個人が直面する内面的な葛藤、すなわち「心理社会的危機」です。
- 課題の性質は、心理的・アイデンティティ的です。例えば、青年期には「アイデンティティ vs. アイデンティティ拡散」、壮年期には「世代性 vs. 停滞性」といった、自己認識や他者との関係性といった内面的な課題を乗り越えることが重要だと考えています。
キャリアとの接点と補完関係
ハヴィガーストとエリクソンの理論は、キャリアを理解する上で互いに欠かせない視点を提供してくれます。
ハヴィガーストの理論は、キャリア形成において「いつ、何をすべきか」という具体的な行動指針を示しています。就職活動の時期、結婚や家庭を持つ時期、キャリアを安定させる時期など、社会的な期待や役割を認識するのに役立ちます。これは、キャリアデザインの実践的な目標設定に有用です。
一方でエリクソンの理論は、キャリア形成を動かす内面的な動機や葛藤に焦点を当てています。仕事を通じて自己をどう確立するか(アイデンティティ)、職場の人間関係をどう築くか(親密性)、後進の育成を通じて何を社会に残すか(世代性)といった、キャリアのより深い意味や自己理解を促します。
まとめると、両理論を組み合わせることで、私たちはキャリアを「いつ、何をすべきか」という行動面と「なぜ、そうしたいのか」という内面的な意味づけの両方から、多角的に捉えることが可能になります。
たとえば、壮年期を考えてみます。ハヴィガーストの理論では、「配偶者の選択」「職業に就くこと」「家庭の管理」といった、社会の中で自立するための具体的なタスクに焦点を当てています。しかし、これらは行動の側面でしかありません。ここでエリクソンの視点を加えることで、より深い意味が見えてきます。エリクソンのこの時期の発達課題は、「親密性 vs. 孤独」です。青年期に確立した「自分は何者か」という自己(アイデンティティ)を保ちながら、他者との「親密な関係性」を築くことが中心となります。
このように、ハヴィガーストが示す「職業に就くこと」という行動は、エリクソンが提唱する「親密な関係性」を築くための重要な土台となるのです。職場での協働や、家庭でのパートナーシップを通じて、私たちはキャリアと人生の両方において、自己を深め、成長させていくことができます。
今後の展開
このシリーズでは、ハヴィガーストが示したライフステージごとの発達課題をもとに、以下のテーマでキャリアとの関係を探っていきます:
02|壮年期の発達課題:社会的責任とキャリアの充実
03|中年期の発達課題:自己再構築とキャリアの転換
04|老年期の発達課題:人生の統合とキャリアの継承
05|まとめ:発達課題から見えるキャリアのライフサイクル
Take-Home Message
ロバート・J・ハヴィガーストの「発達課題」という概念は、エリクソンの理論が提供する内面的な洞察と並び、キャリア形成において実践的かつ強力な羅針盤となります。ハヴィガーストの理論を理解することで、私たちはキャリアを「いつ、何をすべきか」という具体的な行動指針をもって捉えることができます。仕事の基盤を築く壮年期、キャリアを成熟させ社会に貢献する中年期、そして新たな役割に適応する老年期、といったそれぞれのライフステージで直面する課題を明確にすることで、私たちはキャリアの停滞や迷いを、次へ進むための「成長の機会」として捉えることが期待できます。
キャリアは、単なる「点」ではありません。それは、ハヴィガーストが示す発達課題を一つひとつクリアしていく「自己成長のプロセス」そのものであり、「線」として意識をすることでより私たちは、仕事を通じて社会に貢献し、人生をより豊かにしていくことが期待できます。
さて、今回のハヴィガースト理論の概観を踏まえ、次回からはいよいよ壮年期以降の3つのライフステージにおける具体的な発達課題と、それがキャリアにどう影響するのかを深掘りしていきます。

この記事を書いた人
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CEO
Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry
Eli Lilly Japan K.K.
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Sales Manager
Sales Operator
Waseda University in School of Human Sciences (e-school)
Human Informatics and Cognitive Sciences
Waseda University Senior High School
Teaching Assistant (Information Technology)
Waseda University School of Human Sciences
Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)
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