キャリア理論05|エリクソンとハヴィガーストの理論.10


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キャリア理論05|ハヴィガーストの理論.5(発達課題から見えるキャリアのライフサイクル)

ハヴィガースト理論の全体像とキャリア形成への示唆

ロバート・J・ハヴィガーストの発達課題理論は、人生の各ライフステージにおいて社会から期待されやすい課題を示すことで、人間の成長と社会的適応のプロセスを明らかにしました。この理論は、キャリア形成においても非常に有効であり、「その時期にどんなテーマと向き合いやすいか」という目安を与えてくれます。キャリアは単なる職業選択ではなく、人生の発達課題に向き合うことで形成される自己成長のプロセスです。ハヴィガーストの理論を活用することで、キャリアを「点」ではなく「線」として捉え、ライフステージごとの意味づけが可能になります。

発達課題から見えるキャリアのライフサイクル

ハヴィガーストの発達課題をキャリアに当てはめてみると、キャリアは絶えず変化し、成長し続ける「ライフサイクル」として見えてきます(ここでは早期成人期以降に焦点を当てます)。

なお、ハヴィガーストは発達課題とは別の論考(Havighurst, 1964)で、職業発達そのものについても、働く人への同一化、勤勉の習慣の獲得、働く人としてのアイデンティティの獲得、生産的な人になる、といった段階を示したとされています。

1.早期成人期:キャリアの「出発点」

早期成人期(18〜30歳ごろ)の発達課題は、人生の基盤を築くことに焦点を当てています。「職業に就くこと」「家庭を築くこと」といった具体的な課題に取り組むことで、キャリアは出発点を迎えます。この時期に得られる経験は、その後のキャリアを支える揺るぎない土台となります。

  • キャリアとの接点: キャリアの基盤づくり、自己の専門性確立、ワークライフバランスの基礎構築。

2.中年期:キャリアの「成熟と再構築」

中年期は、キャリアが成熟し、多様な広がりを見せる時期です。「次世代の育成」「社会的責任の形成」「余暇活動の充実」といった課題に取り組む中で、キャリアは単なる個人的な成功を超え、社会への貢献という側面を強く持つようになります。同時に、身体的な変化や家族の介護といった課題は、キャリアを再構築する重要なきっかけとなります。

  • キャリアとの接点: リーダーシップの発揮、キャリアの多様化、働き方改革(ワークスタイル・デザイン)。

3.老年期:キャリアの「統合と継承」

老年期は、キャリアの最終章であり、同時に新たな始まりの時期でもあります。「退職と収入の変化への適応」「社会的・市民的な義務(役割)を果たす」といった課題に向き合う中で、これまでの職業経験を総括し、人生全体を受け入れていくプロセスが進みます(エリクソンの言う「統合性」にも通じる姿です)。この時期に、仕事で培った知識や経験を次世代に継承することで、キャリアは単なる個人の歴史ではなく、社会への貢献という形で生き続けます。

  • キャリアとの接点: キャリアの振り返り、セカンドキャリアの創造、社会貢献を通じた自己実現。

ライフステージ別発達課題とキャリアの接点(総括表)

早期成人期以降に焦点を当てています

ライフステージ主な発達課題キャリアとの接点
早期成人期(18〜30歳ごろ)配偶者の選択、職業に就く、家庭の管理、市民的責任、適切な社会集団を見つけるキャリアの基盤形成、自立と定着、社会的役割の獲得
中年期(30〜60歳ごろ)10代の子どもの自立の援助、余暇の充実、経済的生活水準の維持、生理的変化への適応、高齢の両親への対応キャリアの成熟と多様化、ワークライフバランスの再構築、自己理解の深化
老年期(60歳ごろ以降)体力・健康の衰えへの適応、引退と収入減への適応、配偶者との死別への適応、同年代との親和、社会的・市民的義務、住環境の確立キャリアの統合と意味づけ、セカンドキャリア、社会貢献と継承

ハヴィガースト理論のキャリア支援への活用例

キャリアカウンセリング・教育において

  • ライフステージごとの課題を明示することで、相談者の現在地と次のステップを明確化できる。
  • キャリアの悩みを、その時期に向き合いやすいテーマ(発達課題)と照らし合わせることで、今の自分の状況を整理し、前向きな再設計につなげられる。

組織内の人材育成において

  • 年齢やライフステージに応じた支援(例:育児期の柔軟な働き方、定年後の再雇用制度)を設計できる。
  • 社員のキャリアを「人生の発達」として捉えることで、長期的な関係性を築ける。

自己理解とキャリアデザインにおいて

  • 自分のライフステージに応じた課題を意識することで、キャリアの選択に納得感が生まれる。
  • キャリアの意味を「社会との関係性」や「人生の物語」として再構築できる。

Take-Home Message

ハヴィガーストの発達課題理論は、キャリア形成を「生涯発達」の視点から捉えるための、非常に力強いフレームワークです。

私たちはキャリアを、就職や転職といった単発的な「点」の連続として捉えがちです。しかし、ハヴィガーストの理論をキャリアに当てはめてみると、キャリアが早期成人期・中年期・老年期それぞれにおいて、異なる発達課題に向き合う「線」としての継続的なプロセスであることが見えてきます。キャリアとは、単なる職務の履歴ではありません。

  • 早期成人期:役割の獲得
  • 中年期:自己の再構築
  • 老年期:意味の統合

この異なるテーマを乗り越えることで、キャリアは生き方そのものとしての価値を持つものへと進化していきます。

さて、5回にわたって展開してきた「キャリア理論05|ハヴィガーストの理論」シリーズを最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。このシリーズが、皆様のキャリアを見つめ直すきっかけとなり、「今、自分はどのライフステージにいて、どんな課題に向き合っているのか」「これからのキャリアを、どう意味づけていくのか」という問いに、少しでもお役に立てたのであれば嬉しく存じます。

キャリアは、年齢や肩書きに関係なく、自分らしく生きるための道です。ハヴィガーストの理論を通じて、皆様がその道をより豊かに、より納得感を持って歩んでいけることを心から願ってやみません。

参考文献

Havighurst, R. J. (1953). Human Development and Education. Longmans, Green.(邦訳:荘司雅子監訳『人間の発達課題と教育』玉川大学出版部, 1995年)

Havighurst, R. J. (1964). Youth in exploration and man emergent. In H. Borow (Ed.), Man in a World at Work (pp. 215-236). Houghton Mifflin.

この記事を書いた人

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May 2022~

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March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

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