キャリア理論10|転機とキャリア.2

キャリアに
アイディアを

働くためのアイテム

「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。

挑戦し続ける力

自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。

もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。

Information

「キャリア理論10」では、「転機とキャリア~三大巨匠に学ぶ、変化を成長に変える適応の技術~」と題して、全4回でお届けします。

これまで個別に紐解いてきた、キャリアの荒波を乗りこなす、ブリッジス(キャリア理論07)、ニコルソン(08)、シュロスバーグ(09)三つの知恵。本シリーズでは、これら三大巨匠の理論の統合を目指し、バラバラだった知識を「自分らしい未来を切り拓くための具体的な実践ステップ」へと深化を試みます。

「変化」という嵐に翻弄されるのではなく、自らハンドルを握り、次なる目的地へと漕ぎ出すための最強の航海図を、HCCジャパンと共に描いてください。

転機とキャリア.2<タナカさんの物語②>

前回「新しい役割(デジタルと現場を繋ぐインタラクション)」の兆しを見つけたタナカさん。しかし、意欲だけでは現実は動きません。第2回では、シュロスバーグの理論を使い、タナカさんがその役割を果たすための「武器」がどれだけ揃っているのか、4つの資源「4S」を点検していきます。

2026-02-06キャリア理論

キャリア理論10|転機とキャリア.1

シュロスバーグの4S:転機を乗りこなす「装備」を点検する

タナカさん

「役割は見えてきた。でも、具体的にどう動けばいい? 周囲は協力してくれるのか? そもそも、自分にそんなスキルがあるのか…。」

前回、ブリッジスの理論を通じて「沼」の正体を知ったタナカさん。彼は「デジタルと現場を繋ぐ」という新しい自分の立ち位置(アイデンティティ)に気づき始めました。

しかし、いざ行動しようとすると、足元には現実的な問題が山積みです。 「周囲の協力は得られるだろうか?」「自分にそんなスキルがあるのか?」 こうした「実行への不安」を解消し、具体的な一歩を踏み出すために、シュロスバーグの「4Sモデル」が有効です。では早速、現在の装備(資源)を点検しましょう。

タナカさんの装備点検(リソース・チェック)

タナカさんは、キャリアコンサルタントと共に4つの視点から現状を整理しました。

1. Situation(状況):今の転機をどう捉えているか?

  • 原因: 強制的(不本意)
    会社の構造改革による部署閉鎖。
  • タイミング:最悪
    住宅ローンが残り、娘は中学生。生活の安定を最も望む時期。
  • コントロール感:低い
    自分の意志に関係なく「閉鎖と異動」が決定された。
  • 役割の変化: 劇的
    現場の「頼れる生き字引」から、デジタルの「不慣れな新人」へ。
  • 期間: 永続的
    以前の部署に戻る道はなく、会社の方針は定まっている。

2. Self(自己):自分の「持ち価値」は何か?

  • 心理的資源:レジリエンス(回復力)
    最初は「もうダメだ」と完全に折れかかっていたが、ブリッジスの理論で「これは脱皮なんだ」と定義し直したことで、少しずつ「しなやかさ」を取り戻し始めている
  • 自己効力感(「できる!」という感覚)
    「ITスキル」に関してはゼロだが、「現場の職人を説得すること」に関しては「自分なら何とかできる」という強い確信がある
  • 人口統計的な特性(基礎条件)
    45歳、健康状態は良好。住宅ローンはあるものの、これまでの蓄えにより「明日生活が破綻する」わけではないという経済的現実を確認できた。
  • 過去の経験
    10年前、工場の海外移転時に大混乱を収めた経験を思い出し、その時に役立ったのは、最新の知識ではなく「現場一人ひとりの話を丁寧に聞くこと」であった。
2026-01-08キャリア理論

キャリア理論09|シュロスバーグの理論.2

3. Support(支援):誰が味方か?

  • 親密な関係・家族
    妻の存在です。タナカさんが「もう会社に行きたくない」と弱音を吐いたとき、否定せずに「22年も頑張ったんだから、少し休んでもいいのよ」と、ありのままのタナカさんを受け入れてくれる妻、「パパ、新しい仕事も頑張ってね」という無邪気な応援をおくる中学生の娘。
  • 友人ネットワーク
    かつての生産管理時代の同期。会社は離れても、飲みに行けば「現場の苦労」を分かち合え、「お前ならどこでも通用する」と客観的な評価をくれる大切な仲間。
  • 職場・コミュニティ
    最初は敵だと思っていた若手のリーダーは、実は「現場を動かせるタナカさんの力」を喉から手が出るほど欲しがっている「潜在的な味方」と、感情の整理から理論の提示まで、専門家としての地図を提供してくれるキャリアコンサルタント。
2026-01-15キャリア理論

キャリア理論09|シュロスバーグの理論.3

4. Strategies(戦略):具体的な打ち手は?

  • 状況を変える戦略(問題修正型)
    若手リーダーに「ITスキルは君たちから学びたい。その代わり、現場職人への根回しと調整は私が一手に引き受ける」という役割分担の交渉を行う。また、職人が使いにくいと感じているUI(画面)の改善案を具体的にチームへ提案をこなう。
  • 意味を変える戦略(意味づけ変更型)
    デジタル推進室は自分を否定する場所という思い込みを捨て、「ここは、自分の22年の経験が『デジタルと現場の架け橋』として最も必要とされている場所だ」と再定義を行う。
  • ストレスを管理する戦略(感情調整型)
    平日は仕事で神経を使う分、週末は娘と一緒に料理をしたり、庭の手入れに没頭したりと、「仕事以外の自分」を豊かにする時間を意識的につくる。
2026-01-22キャリア理論

キャリア理論09|シュロスバーグの理論.4

資源を「組み替える」ことで実行力が生まれる

シュロスバーグの理論の醍醐味は、「足りないリソースを、他のリソースで補完する」という戦略立案にあります。タナカさんは、対話を通じて次のような実行プランを導き出しました。

タナカさんの資源組み替え戦略

課題
ITスキルが足りない(Selfの不足)
解決策
1. 若手リーダーに「ITの仕組み」を教わる関係を作る(Supportの活用)。
2. 代わりに、若手が苦手な「現場職人への根回し」を自分が一手に引き受ける(Strategiesの実行)。
3. 「ITができない人」から「ITと現場のインターフェース」へと、自分を再定義する(Selfの書き換え)。

タナカさん

「そうか、全部一人でできるようになる必要はないんだ。隣にいる若手の力を借りることも、立派な『戦略』なんだな。」

一人称で「不安だ」と感じていたものが、三人称で資源を整理することで、見通しの明るい「航海図」へと変わった瞬間です。

4Sを「行動の問い」に変える

4Sを整理する際、タナカさんはメタ認知を使って「思い込み」を外していきました。

  • 一人称(当事者)
    「私はITができない。だからこの部署では役に立てない(=自己否定)」
  • 三人称(俯瞰者)
    「タナカさんはITは苦手だが、現場の信頼という稀少な資源を持っている。デジタル推進室が一番欲しがっているのは、実はその資源ではないか?(=構造的理解)」
Point

国家資格 キャリアコンサルタントとの対話
自分一人では「欠けているもの(弱点)」ばかりに目が向き、足が止まってしまいます。コンサルタントは、タナカさんが見落としている「すでにある資源」を照らし出します。

「タナカさん、4Sで整理してみると、実は『Support』が豊富にあります。特に若手リーダーとの関係性は、あなたが歩き出すための強力なエンジンになりませんか?」

Take-Home Message

今回の「タナカさんの物語②」を通じて、手に入れた航海図は次の3つです。

  • 「状況」を客観視し、過度な自己責任の罠を抜ける航海図
    原因・タイミング・コントロール感などの5つの視点で「状況」を分解すると、今の苦しさが「自分の能力不足」ではなく「負荷の高い条件」によるものだと気がつきます。自分を責めるエネルギーを、状況を攻略するためのエネルギーへと転換しましょう。
  • 「ないもの」を嘆くより、「あるもの」を掛け合わせる航海図
    足りないスキル(IT知識など)を単体で埋めようとすると足が止まります。しかし、自分が既に持っている「経験」という資産に、他者の「専門性」を掛け合わせれば、新たなルートで、そして新しい価値を生み出せます。
  • 弱点を、最強のチームを作る「窓口」に変える航海図
    弱点は隠すべきものではなく、他者の強み(サポート)を招き入れるための「伸び代」です。「ここを助けてほしい」と開示することで、若手とベテランが補完し合う、あなたにしか作れない唯一無二の「共創のチーム」が動き出します。
Success

セルフワーク
あなたが今直面している転機に対して、「Support(支援してくれる人・環境)」を3つ書き出してみてください。

親密・家族
本音を吐き出せる相手は?
友人・仲間
損得抜きで共感してくれる人は?
職場・コミュニティ
自分の「できないこと」を「できる」誰かはいませんか?

その助けを借りることで、あなたの「弱点」をどうカバーできるか、あるいは「強み」をどう活かせるか、自由に想像を膨らませてみてください。

キャリアコンサルタントと相談するメリット
「支援」を書き出す際、多くの人が「自分には助けてくれる人なんていない」という孤独な思い込み(盲点)に突き当たります。ここでプロのキャリアコンサルタントという「鏡」を利用することには、次のような大きなメリットがあります。

  • 「資源」の再発見
    自分では当たり前すぎて気づいていない周囲とのつながりや、過去の恩師、疎遠になっていたネットワークなど、活用可能なリソースを対話の中から引き出します。
  • 「助けの求め方」の戦略
    相手にどう声をかければ Win-Win の関係(タナカさんと若手リーダーのような関係)になれるか、具体的なコミュニケーション戦略を一緒に練ることができます。
  • 客観的な「装備点検」
    主観的な不安に飲み込まれそうなとき、プロの視点で4Sを冷静にスコアリングすることで、「意外と戦える装備が揃っている」という事実を確認し、心理的な安定を取り戻せます。

独りで航海図を描く必要はありません。霧が深くて周囲が見えないときこそ、プロの伴走者をリソース(支援)の一つとして活用してください。

次回は、「キャリア理論10|<タナカさんの物語③>」では、ニコルソンの理論を使い、新しい環境で「成果」と「自分らしさ」を両立させるための4つの適応モードから考えます。戦略を立て、周囲の助けを借りて一歩を踏み出したタナカさんですが、ここで新たな悩みが生じます。どんな悩みなのか、そして悩みを解消するためのヒントを探ってまいりましょう。

この記事を書いた人

プロフィール

May 2022~

HCC Japan LLC

CEO

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

会社概要
-COMPANY PROFILE-

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