キャリア理論10|転機とキャリア.2
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「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。
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転機とキャリア.2<タナカさんの物語②>

前回「新しい役割(デジタルと現場を繋ぐインタラクション)」の兆しを見つけたタナカさん。しかし、意欲だけでは現実は動きません。第2回では、シュロスバーグの理論を使い、タナカさんがその役割を果たすための「武器」がどれだけ揃っているのか、4つの資源「4S」を点検していきます。
シュロスバーグの4S:転機を乗りこなす「装備」を点検する

「役割は見えてきた。でも、具体的にどう動けばいい? 周囲は協力してくれるのか? そもそも、自分にそんなスキルがあるのか…。」
前回、ブリッジスの理論を通じて「沼」の正体を知ったタナカさん。彼は「デジタルと現場を繋ぐ」という新しい自分の立ち位置(アイデンティティ)に気づき始めました。
しかし、いざ行動しようとすると、足元には現実的な問題が山積みです。 「周囲の協力は得られるだろうか?」「自分にそんなスキルがあるのか?」 こうした「実行への不安」を解消し、具体的な一歩を踏み出すために、シュロスバーグの「4Sモデル」が有効です。では早速、現在の装備(資源)を点検しましょう。
タナカさんの装備点検(リソース・チェック)
タナカさんは、キャリアコンサルタントと共に4つの視点から現状を整理しました。
1. Situation(状況):今の転機をどう捉えているか?
- 原因: 強制的(不本意)
会社の構造改革による部署閉鎖。 - タイミング:最悪
住宅ローンが残り、娘は中学生。生活の安定を最も望む時期。 - コントロール感:低い
自分の意志に関係なく「閉鎖と異動」が決定された。 - 役割の変化: 劇的
現場の「頼れる生き字引」から、デジタルの「不慣れな新人」へ。 - 期間: 永続的
以前の部署に戻る道はなく、会社の方針は定まっている。
2. Self(自己):自分の「持ち価値」は何か?
- 心理的資源:レジリエンス(回復力)
最初は「もうダメだ」と完全に折れかかっていたが、ブリッジスの理論で「これは脱皮なんだ」と定義し直したことで、少しずつ「しなやかさ」を取り戻し始めている - 自己効力感(「できる!」という感覚)
「ITスキル」に関してはゼロだが、「現場の職人を説得すること」に関しては「自分なら何とかできる」という強い確信がある - 人口統計的な特性(基礎条件)
45歳、健康状態は良好。住宅ローンはあるものの、これまでの蓄えにより「明日生活が破綻する」わけではないという経済的現実を確認できた。 - 過去の経験
10年前、工場の海外移転時に大混乱を収めた経験を思い出し、その時に役立ったのは、最新の知識ではなく「現場一人ひとりの話を丁寧に聞くこと」であった。
3. Support(支援):誰が味方か?
- 親密な関係・家族
妻の存在です。タナカさんが「もう会社に行きたくない」と弱音を吐いたとき、否定せずに「22年も頑張ったんだから、少し休んでもいいのよ」と、ありのままのタナカさんを受け入れてくれる妻、「パパ、新しい仕事も頑張ってね」という無邪気な応援をおくる中学生の娘。 - 友人ネットワーク
かつての生産管理時代の同期。会社は離れても、飲みに行けば「現場の苦労」を分かち合え、「お前ならどこでも通用する」と客観的な評価をくれる大切な仲間。 - 職場・コミュニティ
最初は敵だと思っていた若手のリーダーは、実は「現場を動かせるタナカさんの力」を喉から手が出るほど欲しがっている「潜在的な味方」と、感情の整理から理論の提示まで、専門家としての地図を提供してくれるキャリアコンサルタント。
4. Strategies(戦略):具体的な打ち手は?
- 状況を変える戦略(問題修正型)
若手リーダーに「ITスキルは君たちから学びたい。その代わり、現場職人への根回しと調整は私が一手に引き受ける」という役割分担の交渉を行う。また、職人が使いにくいと感じているUI(画面)の改善案を具体的にチームへ提案をこなう。 - 意味を変える戦略(意味づけ変更型)
デジタル推進室は自分を否定する場所という思い込みを捨て、「ここは、自分の22年の経験が『デジタルと現場の架け橋』として最も必要とされている場所だ」と再定義を行う。 - ストレスを管理する戦略(感情調整型)
平日は仕事で神経を使う分、週末は娘と一緒に料理をしたり、庭の手入れに没頭したりと、「仕事以外の自分」を豊かにする時間を意識的につくる。
資源を「組み替える」ことで実行力が生まれる
シュロスバーグの理論の醍醐味は、「足りないリソースを、他のリソースで補完する」という戦略立案にあります。タナカさんは、対話を通じて次のような実行プランを導き出しました。
タナカさんの資源組み替え戦略
課題
ITスキルが足りない(Selfの不足)
解決策
1. 若手リーダーに「ITの仕組み」を教わる関係を作る(Supportの活用)。
2. 代わりに、若手が苦手な「現場職人への根回し」を自分が一手に引き受ける(Strategiesの実行)。
3. 「ITができない人」から「ITと現場のインターフェース」へと、自分を再定義する(Selfの書き換え)。

「そうか、全部一人でできるようになる必要はないんだ。隣にいる若手の力を借りることも、立派な『戦略』なんだな。」
一人称で「不安だ」と感じていたものが、三人称で資源を整理することで、見通しの明るい「航海図」へと変わった瞬間です。
4Sを「行動の問い」に変える
4Sを整理する際、タナカさんはメタ認知を使って「思い込み」を外していきました。
- 一人称(当事者)
「私はITができない。だからこの部署では役に立てない(=自己否定)」 - 三人称(俯瞰者)
「タナカさんはITは苦手だが、現場の信頼という稀少な資源を持っている。デジタル推進室が一番欲しがっているのは、実はその資源ではないか?(=構造的理解)」
Take-Home Message
今回の「タナカさんの物語②」を通じて、手に入れた航海図は次の3つです。
- 「状況」を客観視し、過度な自己責任の罠を抜ける航海図
原因・タイミング・コントロール感などの5つの視点で「状況」を分解すると、今の苦しさが「自分の能力不足」ではなく「負荷の高い条件」によるものだと気がつきます。自分を責めるエネルギーを、状況を攻略するためのエネルギーへと転換しましょう。 - 「ないもの」を嘆くより、「あるもの」を掛け合わせる航海図
足りないスキル(IT知識など)を単体で埋めようとすると足が止まります。しかし、自分が既に持っている「経験」という資産に、他者の「専門性」を掛け合わせれば、新たなルートで、そして新しい価値を生み出せます。 - 弱点を、最強のチームを作る「窓口」に変える航海図
弱点は隠すべきものではなく、他者の強み(サポート)を招き入れるための「伸び代」です。「ここを助けてほしい」と開示することで、若手とベテランが補完し合う、あなたにしか作れない唯一無二の「共創のチーム」が動き出します。
次回は、「キャリア理論10|<タナカさんの物語③>」では、ニコルソンの理論を使い、新しい環境で「成果」と「自分らしさ」を両立させるための4つの適応モードから考えます。戦略を立て、周囲の助けを借りて一歩を踏み出したタナカさんですが、ここで新たな悩みが生じます。どんな悩みなのか、そして悩みを解消するためのヒントを探ってまいりましょう。

この記事を書いた人
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Waseda University in School of Human Sciences (e-school)
Human Informatics and Cognitive Sciences
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