キャリア理論12|ハンセンの理論.2


キャリア理論12 ・ 全5回の第2回
2026-04-09 ・ 読了目安 約7分 ・ セルフワーク付き

この回でわかること

  • ハンセンの視点で見た「転機」=人生の4つのLの配置が変わる瞬間
  • 危機を、新しい布を縫い足すための「サイン」として読む見方
  • 転機を活かすための「再配置(Re-design)」の4つの問い
課題⑥この回で扱う重要課題:個人の転機と組織の変化をマネジメントする
前回(第1回)からのつながりを読む

第1回では、人生を4つのL(学び・働く・愛し支える・余暇)でできた一枚のキルトとして眺める見方を学びました。今回は、そのキルトが動き出す「転機」を、ハンセンの視点から読み解きます。

01転機とは「人生の布が動き出すとき」

同じ「転機」でも、光を当てる場所が違う

サビカスの理論では、転機は「内面の物語を書き直すタイミング」でした。ハンセンの視点に立つと、転機はもっと広い視野で捉えられます。
Savickas

物語の書き換え

主に、内面の意味づけ。ライフテーマと物語が更新される心理の動き。

Hansen

4つのLの再配置

主に、人生全体の役割の再配置。人生をつくる布の配置が変わる瞬間。

02転機は「人生のキルトの組み替え」である

人生には、大小さまざまな出来事が起こります。表面的には「外側で起きる出来事」に見えますが、ハンセンの視点では、人生を構成する布(4つのL)が動き始める前触れです。

  • 職場異動・昇進・転職
  • 家族結婚・離婚・出産・介護
  • 健康病気・メンタルの揺らぎ
  • 学び学び直し、キャリアチェンジ
  • 人生観価値観の揺らぎ、モチベーションの低下
布が動き始める
Learning学びの布が大きくなる
Labor働く布が縮む
Love愛し・支える布の重さが変わる
Leisure余暇・遊びを縫い足す
人生のキルトが「新しい模様を求めて動き出している」だけなのです。

これは、あなたが弱ったからでも、選択を誤ったからでもありません。転機とは、何かが壊れる瞬間ではなく、新しい配置へと布が動き始める瞬間です。

03なぜ転機は苦しいのか?

仕事と家庭のバランスが揺らぐ。学び直したいのに時間がない。自分の時間が削られ、疲労が蓄積する。人を支えたいのに、自分が限界を感じる。これらは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもありません。

人生の布が、少しずつ“引きつれ”を起こしている

  • 布同士がぶつかっている
  • 縫い目が引きつれている
  • 配置が古いままで合わなくなっている

それは、人生の4つのLが今の配置のままではもう収まりきらなくなったサインです。揺れ・歪み・ほつれは、責めるべきものではなく、変化への準備が整い始めたことを伝える前向きな兆しです。

04「危機」は、新しい布を縫い足すための「サイン」

布が裂けると、そこには新しい布を縫い足せるスペースが生まれます。「裂け目」がどの布に現れているかによって、求められている変化が見えてきます。カードを押して、どの布へのサインか確かめてみましょう。

危機とは「布が壊れること」ではなく、
布を変えるチャンスが訪れたということ。

危機=終わり、ではありません。危機=次の模様が始まるための準備期間なのです。

05転機を乗り越える力は「再配置(Re-design)」

サビカスが示した物語の再構築は、内面を整理し、新しい意味を与えるための技法でした。ハンセンの視点を生活に引き寄せると、その物語を人生という布の上にどう配置するか、という問いが見えてきます。この記事では、次の4つの問いかけを手がかりにします。

  1. 今、大きすぎる布はどれか?

    仕事(Labor)が、他の布を圧迫していないか? 働きすぎて、学びや休息が消えていないか?

  2. 逆に、縮みすぎている布はどれか?

    Love(愛・支え合い)やLeisure(余暇)が、いつの間にか小さくなりすぎていないか?

  3. どんな布を足す必要があるのか?

    新しい学び(Learning)を増やす必要があるか? 休息の時間(Leisure)が足りていないのでは? 人とのつながり(Love)を取り戻したいのでは?

  4. 今の自分なら、どんな配置が最も心地よいか?

    他人の価値観ではなく、「今の自分にとって最適なバランス」は何か?

再配置(Re-design)こそ、転機を活かして今の人生を見つめ直すための力。

06新しい模様は「違和感」から始まる

転機の前には、必ず小さな「違和感」が現れます。この違和感は問題ではありません。

STEP 1

違和感

  • 今の生活がしっくりこない
  • この仕事を続ける未来が描けない
  • 遊びや余白を求めている自分がいる
STEP 2

配置の小さなズレ

  • どれか一枚の布が大きすぎる
  • どれか一枚が縮みすぎている
  • 縫い目が少し引きつれている
STEP 3

最初の一針目

「今を、少し編み替えてみない?」
次の模様(生き方)をつくるための、大切なシグナル。
TAKE-HOME MESSAGE

転機とは、人生のキルトが
次の模様へ進むための「動き」である

  • 転機は、人生の4つのLが今の配置に収まらなくなったサイン
  • 危機は、新しい布を縫い足すための切れ目
  • 再配置(Re-design)こそ、転機を乗り越える力
  • 違和感は、次の模様の「最初の一針目」

「人生のキルトをどう縫い直すかは、いつだってあなた自身が決めてよい。」次の模様をどんな色にするかは、あなたの手の中にあります。

WORKあなたの人生のキルトは、いま何を語っているだろう?

一行でかまいません。直感で、いまのあなたの心に浮かぶ言葉を書き出してみてください。

Q1

最近の自分に起きている「転機」は何ですか?

大きな出来事でなくて大丈夫です。ちょっとした違和感、小さな揺れでも構いません。

生活のリズムが変わったなんとなく疲れが取れない人との関わり方が変わってきた学びたい気持ちが芽生えた
Q2

その転機は、4つのLのどれに影響していますか?

どこで張りつれ、どこで縮まり、どこに余白が生まれようとしているのか感じ取ってみてください。

働く布が大きすぎていないか愛・支え合う布が重くなっていないか学び直しが必要な気がしていないか余暇の布が薄れすぎていないか
Q3

その動きは、どんな“新しい模様”のヒントをくれていますか?

それらはすべて、転機があなたに贈ってくれる未来への合図です。

新しい布を足したい場所少し縫い直したい部分丁寧に扱いたい布思い切って変えたい配置
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参考文献

Hansen, L. S. (1997). Integrative Life Planning: Critical Tasks for Career Development and Changing Life Patterns. San Francisco: Jossey-Bass.
Hansen, L. S. (2001). Integrating work, family, and community through holistic life planning. The Career Development Quarterly, 49(3), 261-274.
Skovholt, T. S., Hage, S. M., Kachgal, M. M., & Gama, E. P. (2007). An interview with Sunny Hansen: Pioneer and innovator in counseling and career development. Journal of Counseling & Development, 85(2), 245-253.
Gelatt, H. B. (1989). Positive uncertainty: A new decision-making framework for counseling. Journal of Counseling Psychology, 36(2), 252-256.


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