キャリア理論12|ハンセンの理論.2

キャリアに
アイディアを

働くためのアイテム

「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。

挑戦し続ける力

自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。

もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。

Information

「キャリア理論12」では、L・サニー・ハンセン(L. Sunny Hansen)が提唱した
「統合的人生設計( ILP :Integrated Life Planning)」の世界を探求します。

前回のサビカスの理論
自らの経験に意味を与え、物語として再構築する技法を学んだ私たちは、
自然とひとつの問いに行き当たります。

「では、その物語を人生という限られた時間の中で
どのように「形」にしていけばいいのだろう?」

この問いに静かに、しかし力強く応えるのが、ハンセンです。

ハンセンは、私たちの人生にスポットライトを当て、こう問いかけます。

仕事・家庭・学び・遊び…
これらは本当に「別々のもの」だろうか?

私たちは、人生をひとつの作品として
どうデザインできるのだろうか?

変化の激しいVUCAの現代において、
もはや「仕事だけのキャリア」では人生を語り尽くすことはできません。

VUCA : 変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字。一言で言えば「予測困難な社会」を指す言葉です

そこで、ハンセンは、人生を構成する要素を「4つのL」と名付けました。

  • 学び(Learning)
  • 働く(Labor)
  • 愛し・支える(Love)
  • 余暇・遊び(Leisure)

この4つのLを、どう一本の糸で編み合わせながら、
人生の節目(トランジション)と仕事の節目(キャリア選択)を
ひとつの流れとして統合していくのか?

これを紐解くために生まれたのが
統合的人生設計(ILP) です。

ハンセンの ILP は、
人生のあらゆる側面を俯瞰し、つなぎ、調和させるための
ホリスティック(全体的)キャリア理論
ここには、次のような世界観が広がります。

  • 危機(Crisis)は、機会(Opportunity)へと姿を変える
  • 人生の役割同士が、ぶつかるのではなく支え合う
  • 個人の幸せが、社会や地球との調和と響き合う
  • 善き人生とは何か、を再定義する視点が育つ

サビカスが 物語を紡ぐ力 を強調したのに対し、
ハンセンはその物語を、
どう人生という舞台に配置し、デザインするか、つまり「人生の全体設計」
を整える力を示しています。

あなたの人生の中にある

学び続けること、働くこと、愛し支え合うこと、遊び休むこと、
これらのすべてをひとつの布へと縫い合わせる旅。

自分だけの成功を超え、
善き人生とは何か を探究する旅。

では、これから全5回にわたって、あなたの人生の設計図「ILP」を一緒に描く旅に出掛けましょう。

キャリア理論12|ハンセンの理論.2(転機は「人生のキルトの組み替え」である)

転機とは「人生の布が動き出すとき」

サビカスの理論では、転機(変化・揺らぎ)は、
「内面の物語を書き直すタイミング」 でした。

  • なぜ私はこの選択をしたのか?
  • 私の物語はどこへ向かおうとしているのか?
  • 過去の経験はどんなテーマでつながっているのか?

サビカスは、転機を 「ライフテーマと物語が更新される心理の動き」 として捉えました。

一方で、ハンセンはこれをさらに広い視点にひろげます。


「転機とは、人生をつくる布(4つのL)の配置が変わる瞬間である。」

つまり、同じ「転機」でも、

  • サビカス:物語の書き換え(内面の変化)
  • ハンセン:人生4Lの再配置(外面の変化)

という 異なる階層の変化 を扱っています。

転機は「人生のキルトの組み替え」である

人生には、大小さまざまな出来事が起こります。

  • 職場の変化(異動・昇進・転職)
  • 家族の変化(結婚・離婚・出産・介護)
  • 健康の変化(病気・メンタルの揺らぎ)
  • 学びの変化(学び直し、キャリアチェンジ)
  • 人生観の変化(価値観の揺らぎ、モチベーションの低下)

これらは表面的には「外側で起きる出来事」に見えます。
ハンセンの視点では 人生を構成する布(4つのL)が動き始める 前触れ です。

たとえば、

学び(Learning)の布が大きくなる
働く(Labor)の布が縮む
愛し・支える(Love)の布の重さが変わる
余暇・遊び(Leisure)を縫い足す必要が出てくる

これは、あなたが弱ったからでも、選択を誤ったからでもありません。

人生のキルトが「新しい模様を求めて動き出している」だけなのです

転機とは、何かが壊れる瞬間ではなく、
新しい配置 へと布が動き始める瞬間。

つまり、ハンセンが伝える 転機 とは、
あなたの人生のキルトが、次の章のデザインを求めて自ら動き出す時期 です。

なぜ転機は苦しいのか?

転機の時期は、しばしば 葛藤 が生まれます。

  • 仕事と家庭のバランスが揺らぐ
  • 学び直したいのに時間がない
  • 自分の時間が削られ、疲労が蓄積する
  • 人を支えたいのに、自分が限界を感じる

これらは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもありません。

ハンセンは、それをこう解釈します。

「人生の4つのLが、今の配置のままでは
もう 収まらなくなったというサイン である。」

人生の布が、少しずつ“引きつれ”を起こしているのです。

  • 布同士がぶつかっている。
  • 縫い目が引きつれている。
  • 配置が古いままで合わなくなっている。

だから苦しくなる。

これは あなたが壊れたわけではなく、
あなたの人生のキルトの配置が 変化を求めているだけ なのです。

ハンセンは言います。

「揺れ・歪み・ほつれは、設計の見直し を知らせる優しいサインである。」

責めるべきものではなく、
むしろ 変化への準備 が整い始めたことを伝える 前向きな兆し です。

「危機」は、新しい布を縫い足すための 「サイン」 である

転機の中には どうしても 痛み が伴います。

  • 自信が揺らぐ
  • 焦りを感じる
  • 将来が見えない
  • 現状維持したくてもできない

こうした感覚は決して珍しいものではありません。
むしろ、人生の転機には必ずといっていいほど現れる 揺れ です。

ハンセンは、この痛みを悲観的には見ません。

「危機は、人生のキルトを編み直すための 『サイン』 である。」

布が裂けると、そこには 新しい布を縫い足せるスペース が生まれます。

その裂け目は、あなたの人生が変わろうとしている証。
そして、その「裂け目」がどの布に現れているかによって、求められている変化が見えてきます。

たとえば、

挫折 があった→ 新しい学び(Learning)の布を呼ぶサイン
病気や疲れ が続いた→ 休息(Leisure)という布の重要性を気づかせるサイン
家族の変化 が起きた→ 愛(Love)の布の重さが変わるサイン
仕事の変化 に揺さぶられた→ 働き方(Labor)の大きさを調整する必要を知らせるサイン

ここが大切です。

危機とは「布が壊れること」ではなく、
布を変えるチャンスが訪れた ということ。

危機=終わり、ではありません。
危機=次の模様が始まるための準備期間なのです。

あなた自身が気づかないうちに、
人生のキルトは 次の章に進むための新しい布 を求め始めています。


転機を乗り越える力とは「再配置(Re-design)」である

サビカスが示した 物語の再構築 は、
あなたの 内面 を整理し、新しい意味を与えるための技法でした。

一方、ハンセンが提示するのは、
その物語を 人生という布の上にどう配置するか という、より 生活に根ざした処方箋 です。

ハンセンは言います。

転機は、人生の4つのLを再配置(Re-design)することで乗り越えられる。

つまり、転機とは、
Learning(学び)・Labor(働く)・Love(支え合い)・Leisure(余暇・遊び)が
今の配置のままではフィットしなくなっているというサイン です。

では、どのように「再配置」すればよいのでしょうか?
その鍵となるのが、次の問いかけです。

今、大きすぎる布はどれか?

  • 仕事(Labor)が、他の布を圧迫していないか?
  • 働きすぎて、学びや休息が消えていないか?

逆に、縮みすぎている布はどれか?

  • Love(愛・支え合い)やLeisure(余暇)がいつの間にか小さくなりすぎていないか?

どんな布を足す必要があるのか?

  • 新しい学び(Learning)を増やす必要があるか?
  • 休息の時間(Leisure)が足りていないのでは?
  • 人とのつながり(Love)を取り戻したいのでは?

今の自分なら、どんな配置が最も心地よいか?

  • 他人の価値観ではなく、「今の自分にとって最適なバランス」は何か?

これらの問いに向き合うことは、
人生の布を 丁寧に縫い直す プロセスそのものです。

再配置(Re-design)こそ、
転機を 乗り越える のではなく、転機を活かして今の人生を見つめ直す ための力。

転機は、新しい模様を求めて布が動く瞬間。
その動きに合わせて、あなた自身が布を配置し直すことで、
人生のキルトはさらに 深く、美しく、あなたらしい模様 へと進化していきます。

新しい模様は「違和感」から始まる

転機の前には、必ず小さな「違和感」が現れます。

  • なんとなく、今の生活がしっくりこない
  • この仕事を続ける未来が描けない
  • 家族や自分を大切にしたいのに、時間がない
  • 遊びや余白を求めている自分がいる

この違和感は 問題 ではありません。

むしろ、

次の模様(生き方)をつくるための「最初の一針目」

違和感が生まれたということは、
あなたの人生のキルトの 配置に小さなズレが生じ始めた証拠 です。

  • どれか一枚の布が大きすぎる
  • どれか一枚が縮みすぎている
  • つながっていた縫い目が少し引きつれている

その「ズレ」が、あなたにそっと語りかけています。

「今を、少し編み替えてみない?」

違和感とは、
あなたの人生が 次の模様に進もうとしている前触れ です。

それは恐れるものではなく、
変化を前向きに捉えるための大切なシグナル なのです。

Take-Home Message

転機とは、人生のキルトが次の模様へ進むための「動き」である

  • 転機は、人生の4つのLが今の配置に収まらなくなったサイン
  • 危機は、新しい布を縫い足すための切れ目
  • 再配置(Re-design)こそ、転機を乗り越える力
  • 違和感は、次の模様の「最初の一針目」

そして何よりも大切なことは、

「人生のキルトをどう縫い直すかは、
いつだってあなた自身が決めてよい。」

転機はあなたを脅かすものではありません。
転機は、あなたの人生を
より美しく・より深く・よりあなたらしく
編み直すチャンスとして訪れます。

次の模様をどんな色にするかは、あなたの手の中にあります。

Success

セルフワーク
あなたの人生のキルトは、いま何を語っているだろう?

転機は、あなたの人生のキルトが 次の模様 を求めて動き出すサインです。

その動きを受け取るために、
静かに、自分自身に耳を澄ませてみましょう。

下の3つの問いに、一行でかまいません。
直感で、いまのあなたの心に浮かぶ言葉を書き出してみてください。

① 最近の自分に起きている「転機」は何ですか? 

大きな出来事でなくて大丈夫です。
ちょっとした違和感、小さな揺れでも構いません。

  • 生活のリズムが変わった
  • なんとなく疲れが取れない
  • 人との関わり方が変わってきた
  • 学びたい気持ちが芽生えた…

その“変化の種”を書き出してみてください。

② その転機は、4つのLのどれに影響していますか?

Learning / Labor / Love / Leisure
のどれが動き始めていますか?

  • 「働く布」が大きすぎていないか
  • 「愛・支え合う布」が重くなっていないか
  • 「学び直し」が必要な気がしていないか
  • 「余暇の布」が薄れすぎていないか

いま、あなたの人生の布が
どこで張りつれ、どこで縮まり、どこに余白が生まれようとしているのか
感じ取ってみてください。

③ その動きは、どんな“新しい模様”のヒントをくれていますか?

ここがもっとも大切です。

  • 新しい布を足したい場所
  • 少し縫い直したい部分
  • 丁寧に扱いたい布
  • 思い切って変えたい配置

それらはすべて、
転機があなたに贈ってくれる 未来への合図 です。

人生のキルトは、一針、一針の気づきから変わっていく。

その一針が、新しい模様のはじまりです。

次回は、「キャリア理論12|ハンセンの理論.3(役割は、対立ではなく「調和」へ編み変えられる)です。転機によって人生のキルトが動き始めたとき、次に浮かび上がるのは、

仕事・家庭・学び・遊びは、どうすれば互いに支え合えるのか?

という問いです。

  • 仕事(Labor)と家庭(Love)がぶつかる
  • 学び(Learning)が犠牲になる
  • 余暇(Leisure)が削られ続ける

多くの人が抱えるこの ロールの衝突 を、ハンセンは 「相互補完へと編み直すことができる」 と語ります。人生の4つのLを 対立ではなく調和 に変えていくハンセンILPの中核を、一緒に深掘りしていきます。

この記事を書いた人

現在
2022年5月〜

HCC Japan LLC.

代表社員

2023年4月〜

Waseda University, School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

2023年10月〜2025年2月
Teaching Assistant, Waseda University Senior High School (Information Technology)

2025年4月〜7月
Teaching Assistant, School of Human Sciences (Collaborative Learning and the Learning Sciences)
これまでの歩み
1996年3月
Tokyo University of Agriculture, Faculty of Bioindustry
1996年4月〜2022年3月(26年間)
Eli Lilly Japan K.K.

Sales & Marketing / Sales Manager / Sales Operator

保有資格

国家資格キャリアコンサルタント (National Licensed Career Consultant) 登録番号25072525
医療経営士 (Medical Management Specialist Third Grade) 3級認定登録番号31310119010282

会社概要
-COMPANY PROFILE-

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