キャリア理論11|サビカスの理論.1


キャリアに
アイディアを

働くためのアイテム

「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。

挑戦し続ける力

自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。

もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。

Information

「キャリア理論11」では、マーク・L・サビカス(Mark L. Savickas)が提唱した「キャリア構築理論(Career Construction Theory)」の世界を探求します。

急速に変化し、正解のないVUCAの21世紀社会において、キャリアはどこかにある正解を「探す」ものではなく、自らの手で「意味づけ、構築するもの」へと進化しました。本シリーズでは、これまでの特性因子論的な「適職探し」を一歩進め、あなたという人間が持つ一貫性を再発見していきます。

「私はなぜ、あの時この道を選んだのか?」
「これから、どんな「私らしい物語」を綴っていきたいのか?」

過去の断片的な経験を、未来へと続くひとつの「ストーリー」へと統合していく旅。自分の人生の主導権を取り戻し、変化を乗り越えるための新しい知恵を、全4回にわたってお届けします。

キャリア理論11|サビカスの理論.1(職業パーソナリティ)

サビカスって?

マーク・L・サビカス(Mark L. Savickas)は、キャリア構築理論(Career Construction Theory)やライフデザイン(Life Design)の分野で、国際的に最も影響力のある研究者の一人です。ノースイースト・オハイオ医科大学(Northeast Ohio Medical University)の教授として、またケント州立大学でキャリアカウンセリングを教えながら、数十年にわたりキャリア心理学の教育・研究に従事し、全米キャリア開発協会(NCDA)の会長も務めました。

研究で問い続けてきたのは

“人はなぜ、その仕事を選ぶのか?”
“その選択にはどんな“物語”が込められているのか?”

サビカスは、「適職」という概念に大きな疑問を投げかけました。従来のように「人=性格」「仕事=向き・不向き」という静的なマッチングではなく、個人が経験に意味を与え、自らのキャリアを物語として再構築していく動的プロセスに注目したのです。

1970年代からキャリア発達の研究を重ね、やがて「語り(ナラティブ)」の力に注目して、実証研究・臨床経験・インタビュー分析を膨大に蓄積してきました。そのためサビカスの理論は、

  • 学術的に強固
  • 実践的で、現場で使いやすい
  • 多様な文化で応用可能

という三拍子がそろった数少ない理論です。

今日では欧米のみならずアジアでも広く受け入れられ、「人生の移行期にあるすべての人が、自らの物語の“著者”になるための理論」として、世界中のキャリア支援現場で活用されています。

Mark Savickas Webpage<外部リンク>

職業パーソナリティとは何か?

RIASEC※は性格診断ではなく「自己表現」である
※RIASECについてはこちらをご参照ください

2025-01-30

キャリア理論03|ホランドの理論.1

サビカスは、ホランドの六角形(RIASEC)を受け継ぎながら、それを「人に備わった固定的な特性」ではなく、「自分を表す言葉」として大胆に再解釈しました。

RIASECとは、職業的な行動を通じて
「自分は何者でありたいか」を表現するための言語である

これまでのキャリア支援では、

  • 「R(現実的)な数値が高い→技術職に向いている」
  • 「A(芸術的)な興味がある→クリエイティブな仕事が合っている」

といった適性診断として扱われることが一般的でした。しかしサビカスは、結果そのものより

  • 「なぜその興味に惹かれたのか?」
  • 「その行動を通じて自分は何を表現したかったのか?」

という「背景の意味」に注目しました。つまりRIASECは、あなたが自分を表現するために選んできた語彙(ボキャブラリー)なのです。

選んだ道の裏側にある「なぜ」を掘り起こす

サビカスは、人を3つの視点から捉えます。社会の中で役を演じる「行為者(actor)」、目標に向かって自分を動かす「主体(agent)」、そして経験に意味を与えて物語る「著者(author)」です。職業パーソナリティは、このうち「行為者」としての私、つまりキャリアの「何を(What)」にあたります。「主体」は第2回・第3回で扱うキャリア・アダプタビリティ(どのように:How)に、「著者」は第4回で扱うライフテーマ(なぜ:Why)にあたります。そしてサビカスは、選択の奥にある「なぜ」、つまり子どもの頃から心を占めてきたとらわれや願いに目を向けることで、職業パーソナリティの意味がはじめて見えてくると考えました。

同じ「カフェ店員」という経験でも、そこに込めた意味は人によってまったく違います。

  • 人と関わることに喜びを感じた人
  • 仕組みを改善することにワクワクした人
  • 居心地のよい空間をつくることに惹かれた人

履歴書には同じ「カフェ店員」としか書かれません。しかしサビカスは、その選択を動かした「理由の物語」にこそ、その人らしさを読み解く手がかりがあると考えました。

たとえばこんな経験がありませんか?

  • なぜ、あの部活を選んだのか?
  • なぜ、そのバイトを続けたのか?
  • なぜ、その仕事に惹かれたのか?

外的な理由(時給・距離・おすすめされた等)ではなく、その瞬間の自分は、何を求め、何に反応していたのか。サビカスは、こうした小さな選択の中にその人が生きる「人生のテーマ(Life Theme)」の断片が隠れていると考えました。この「理由の物語」は、第4回で扱う「ライフテーマ」の入り口です。

バラバラに見える経験は、「なぜそれを選んだのか」という糸でつなぐことで、あなただけの物語として浮かび上がります。

RIASECの「静的→動的」への転換

サビカスは、ホランドのRIASEC(現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的)という指標を、単なる「ラベル」から「ストーリーを読み解くツール」へと転換させました。次のような対比が有効です。

静的な理解(従来の適性診断)

  • 向いている職業を分類する
  • 自分の性格をタイプ分けする
  • 当てはまる職を探す

動的な理解(サビカス流)

  • 自分がどんな行動を選び、どう表現してきたかを知る
  • 自己概念を物語(ストーリー)として捉える
  • 過去の意味づけを手がかりに、未来を構築する材料にする

従来の診断では、「私はS(社会的)タイプだから教育や福祉の仕事が向いている」というラベルとして受け取ります。しかしサビカスの問いかけはこうです。

「なぜ私は、S(社会的)という役割を選んで生きてきたのだろう?」

この問いを立てた瞬間、RIASECはあなたを縛る型から、あなたの物語を語る言葉へと変わります。


Take-Home Message

「適性」という名のラベルを剥がし、「人生の著者」としてのペンを持つ

サビカスが伝えてくれるのは、あなたのキャリアの歴史は、偶然ではない
という確信です。

  • RIASECはあなたを分類するための型ではなく、あなたが自分を表現するために選んできた言葉である。
  • 診断の結果だけでなく、「なぜそれを選んできたのか」という自分なりの理由を信じてよい。
  • 過去の小さな選択の裏側には、あなたにしか語れない「物語の種」がある。

まずは、自分の歩んできた道を「意味のコレクション」として見つめ直してみてください。あなたは、自分の人生という物語の唯一無二の 「作者」 なのです。

Success

セルフワーク
サビカス流の視点を持つために、以下の3つの質問に答えてみてください。

過去の「小さな選択」を一つ選ぶ
(例:高校で選んだ部活、初めてのアルバイト、今の仕事への応募動機など)

当時の自分に「なぜそれを選んだの?」と聞いてみる
(※「時給が良かったから」「勧められたから」といった外的な理由ではなく、「その時の自分は何を求めていたのか、何にワクワクしたのか」という内的な関心に耳を澄ませてください)

その選択を「一言」で表現するなら?
(例:接客バイトを選んだ自分=「知らない世界と繋がりたいと思っていた演者」、今の事務職を選んだ自分=「混乱を整えたいと願う守り手」など)

次回は、「キャリア理論11|サビカスの理論.2(キャリア・アダプタビリティ:前編)」です。自分の「物語」の輪郭が見えてきた次に必要となるのは、変化の激しい時代をしなやかに生き抜く適応力(アダプタビリティ)です。ドナルド・スーパーの「キャリア成熟」から、サビカスが体系化した「キャリア・アダプタビリティ」への流れを深掘りします。

参考文献

Holland, J. L. (1997). Making Vocational Choices: A Theory of Vocational Personalities and Work Environments (3rd ed.). Psychological Assessment Resources.

McAdams, D. P. (1995). What do we know when we know a person? Journal of Personality, 63(3), 365-396.

Savickas, M. L. (2005). The theory and practice of career construction. In S. D. Brown & R. W. Lent (Eds.), Career Development and Counseling: Putting Theory and Research to Work (pp. 42-70). Wiley.

Savickas, M. L. (2011). Career Counseling. American Psychological Association.(邦訳:日本キャリア開発研究センター監訳『サビカス キャリア・カウンセリング理論』福村出版, 2015年)

Savickas, M. L. (2013). The 2012 Leona Tyler Award Address: Constructing careers—Actor, agent, and author. The Counseling Psychologist, 41(4), 648-662.

この記事を書いた人

May 2022~

HCC Japan LLC

CEO

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

Certified
National Licensed Career Consultant, 25072525
Medical Management Specialist, Third Grade, 31310119010282

会社概要
-COMPANY PROFILE-

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