キャリア理論11|サビカスの理論.4


キャリアに
アイディアを

働くためのアイテム

「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。

挑戦し続ける力

自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。

もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。

Information

「キャリア理論11」では、マーク・L・サビカス(Mark L. Savickas)が提唱した「キャリア構築理論(Career Construction Theory)」の世界を探求します。

急速に変化し、正解のないVUCAの21世紀社会において、キャリアはどこかにある正解を「探す」ものではなく、自らの手で「意味づけ、構築するもの」へと進化しました。本シリーズでは、これまでの特性因子論的な「適職探し」を一歩進め、あなたという人間が持つ一貫性を再発見していきます。

「私はなぜ、あの時この道を選んだのか?」
「これから、どんな「私らしい物語」を綴っていきたいのか?」

過去の断片的な経験を、未来へと続くひとつの「ストーリー」へと統合していく旅。自分の人生の主導権を取り戻し、変化を乗り越えるための新しい知恵を、全4回にわたってお届けします。

キャリア理論11|サビカスの理論.4(ライフテーマと物語への統合)

本シリーズで、サビカスの理論.1で「職業パーソナリティ」を、サビカスの理論.2で「キャリア・アダプタビリティ(適応力)」の全体像、そしてサビカスの理論.3で「キャリア・アダプタビリティ(適応力)」のスタンスを形づくる4つの要素(4C)から、キャリアを「適職探し」から「物語の構築」へとアップデートしてきました。

そして今回のサビカスの理論.4では、この物語の核となり、あなたのキャリアの根幹となる「ライフテーマ(Life Theme)」を探求します。

  • なぜ私は、その選択をしたのか?
  • なぜ私は、その役割に惹かれたのか?
  • 私が繰り返し選んでしまう「パターン」は何を語っているのか?

これらの問いに答える「北極星」の見つけ方を紐解いていきましょう。

ライフテーマとは、あなたの「根っこの物語」

サビカスは、キャリアを単なる職歴の積み重ねではなく、「人生の課題を解決しようとするプロセス」だと捉えました。

人は仕事を通じて、
自分の人生の課題に取り組んでいる。

ライフテーマとは、あなたが人生を通じて無意識に解決しようとしてきた「問い」であり、社会に対して果たしたいという「役割」です。それは決して立派な志である必要はなく、もっと素朴で個人的な願いや、ささやかな悩みから始まります。

たとえば…

  • 誰かを支えたい / 混乱を整えたい
  • 自由でありたい / 安心できる居場所をつくりたい
  • 世界のしくみを理解したい / 人とつながりたい

あなたが何気なく続けてきた選択には、必ずどれか一つの「根っこの願い」が隠れています。
それがあなたのキャリアという物語を貫く「幹」となるのです。

サビカスはさらに、ライフテーマの根っこには、子どもの頃から抱えてきた悩みや満たされなかった思いがあることが多い、と考えました。人は仕事を通じて、かつて受け身で耐えるしかなかったことを、今度は自分の力で乗りこえ、誰かのために活かそうとします。サビカスはこれを「とらわれ(preoccupation)を、仕事(occupation)へ」と表現しています。ライフテーマが単なる「好きなこと探し」と違うのは、こうした痛みが力へと変わっていく物語でもあるからです。

なぜ「ライフテーマ」が北極星なのか?

キャリアの不安は、多くの場合「外的なキャリア(職位や年収、評価や流行)」を追い求めすぎることで起こります。しかし、ライフテーマという自分だけの「北極星」が見えている人は、環境が変わっても立ち返る場所があります。

  • Aさんのテーマが「人を支える」なら
    教育、接客、人事…どの道を選んでも、それは「人を支える物語」の継続であり、一貫した選択になります。
  • Bさんのテーマが「仕組みを整える」なら
    事務、オペレーション、IT改善…職種が変わっても、自分の本質を活かしている実感を持てます。

ライフテーマは、一見バラバラに見える過去の経験をすべて「意味のある伏線」として回収し、未来への自信に変えてくれます。

ライフテーマを見つける3ステップ

サビカスは、ライフテーマを本人の語りの中から引き出すために、「キャリア構築インタビュー(Career Construction Interview)」という面談の方法を開発しました。①子どもの頃に憧れた人(ロールモデル)、②よく見る雑誌・テレビ番組・Webサイト、③好きな物語(本や映画)、④好きな言葉(座右の銘)、⑤いちばん古い記憶、という5つの問いを通して、本人もまだ言葉にしていない人生のテーマを浮かび上がらせます。
なお、①のロールモデルは「自分がなりたい姿」の設計図を映すもので、次のSTEP1で振り返る「実際に担ってきた役割」とは別のものです。ここでは、キャリア構築インタビューの考え方をヒントにした、HCCジャパンによる簡易版として、次の3ステップを紹介します。

あなたが選んできた「役割」を思い返す

  • 学生時代の部活
  • アルバイト
  • 最初の仕事
  • 乗り越えた困難
  • 誰かに頼られた場面

これまで他者から頼られる、あるいは自ら進んで引き受けてきた「役割」は何でしたか?

STEP
1

その裏側にある「心が動いた理由」を探す

  • なぜ部活で副キャプテンを選んだ?
  • なぜ忙しい接客バイトを続けた?
  • なぜ困っている人を放っておけない?
  • なぜ仕組み化や効率化に喜びを感じる?

外的理由(時給、仕事時間の短さ、言われたなど)ではなく、心が動いた瞬間を思い出してください。「なぜその時、自分はそうしたのか?」その内的な動機を掘り下げます。

STEP
2

「一言」に集約してみる

  • 「私は、人が前に進むのを支えたい」
  • 「私は、混乱した場を整えたい」
  • 「私は、安心できる居場所を作りたい」
  • 「私は、世界を理解する手がかりを探している」
  • 「私は、新しい価値をつなぎたい」

あなたの願いを一言に込めます。これが、あなただけのライフテーマです。

STEP
3

ライフテーマは「幹」、物語は「編み直せる枝葉」

サビカスにとってライフテーマは、人生のさまざまな変化を貫いて、あなたのキャリアに一貫性と連続性を与える「幹」のようなものです。だから、転職や役割の変化があるたびに、テーマを一からつくり直す必要はありません。

ライフテーマは、人生のステージごとに語り直される。

変わっていくのは、テーマを表現する物語と、テーマを生きる舞台のほうです。20代には「人を支えたい」が接客の現場で表れ、40代には後輩を育てる役割で表れるかもしれません。また、かつては悩みや痛みとして抱えていたテーマが、経験を重ねるうちに、誰かのために活かせる力へと意味を深めていくこともあります。
むしろ、同じ幹から新しい枝葉を伸ばし、物語を編み直し続けることこそが、「人生を生きている証」です。


Take-Home Message

あなたの物語は、もう始まっています。

ライフテーマは「新しく作るもの」ではありません。
これまであなたが生きてきた物語の中に、すでに流れているものです。

  • 職業パーソナリティ(あなたの表現する姿=キャリアの「何を」)
  • キャリア・アダプタビリティ(あなたの変化を乗りこなす姿勢=「どのように」)
  • ライフテーマ(あなたの根っこの願い=「なぜ」)

この3つが重なるところに、あなたの「リアルなキャリア」が立ち上がります。
あなたは今までも物語を生きてきました。
そして、これからも自分の物語を編み続けていきます。

Success

最終セルフワーク~あなたの北極星を言葉にする~

次の質問に答えてみてください。
書き出すだけで、あなたの物語の幹が見えてきます。

① これまでの人生で、自然と選んできた「役割」は何ですか?
(例:まとめ役/聞き役/調整役/改善役/挑戦役)


② その役割を選んだとき、心のどこが動いていましたか?
(例:支えたい、整えたい、探したい、つながりたい、守りたい など)


③ それを一言にすると、あなたの“人生のテーマ”は何ですか?

この一言が、歩んできた道とこれから続く未来をつなぐ、あなただけの北極星になります。

サビカスが示したのは、個人が自分の物語を編み直す「内的プロセス」でした。次に扱う L・サニー・ハンセン(L. Sunny Hansen)は、その「個人の物語」を、

仕事(Work)と人生全体(Life)の大きな枠組みの中で、どう統合するか?

という視点へと広げていきます。ハンセンのシリーズでは、次のテーマを扱います。

  • 人生を形づくる「4つのL」と、統合的人生設計(ILP)の土台にある「6つの重要課題」
  • 転機を、人生の役割の配置が変わるときとして捉える見方
  • 仕事・家庭・学び・余暇の役割を「調和」へとつなぐ考え方
  • 自分の人生を、社会や世界とのつながりの中で考える視点

サビカスで物語を描き、
ハンセンで人生という舞台を設計する。

VUCA※の時代に、
「私らしく生きる力」を育てるのがサビカスだとすれば、「人生全体を統合し、進路を選び取る力」を導くのがハンセンです。
サビカスで自らの「物語」を描き、ハンセンで「人生という舞台」を設計する。
この2つの知恵を揃えたとき、あなたのキャリア設計は、より広く、立体的なものになっていきます。次シリーズもどうぞお楽しみに。

※ VUCA : 変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字。一言で言えば「予測困難な社会」を指す言葉です

参考文献

Csikszentmihalyi, M., & Beattie, O. V. (1979). Life themes: A theoretical and empirical exploration of their origins and effects. Journal of Humanistic Psychology, 19(1), 45-63.

Savickas, M. L. (2005). The theory and practice of career construction. In S. D. Brown & R. W. Lent (Eds.), Career Development and Counseling: Putting Theory and Research to Work (pp. 42-70). Wiley.

Savickas, M. L., et al. (2009). Life designing: A paradigm for career construction in the 21st century. Journal of Vocational Behavior, 75(3), 239-250.

Savickas, M. L. (2011). Career Counseling. American Psychological Association.(邦訳:日本キャリア開発研究センター監訳『サビカス キャリア・カウンセリング理論』福村出版, 2015年)

Savickas, M. L. (2013). Career construction theory and practice. In S. D. Brown & R. W. Lent (Eds.), Career Development and Counseling: Putting Theory and Research to Work (2nd ed., pp. 147-183). Wiley.

この記事を書いた人

May 2022~

HCC Japan LLC

CEO

April 2023~

Waseda University in School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

March 1996

Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry

April 1996〜March 2022

Eli Lilly Japan K.K. 

Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator

October 2023~February 2025

Waseda University Senior High School

Teaching Assistant (Information Technology)

April 2025~ July 2025

Waseda University School of Human Sciences

Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)

Certified
National Licensed Career Consultant, 25072525
Medical Management Specialist, Third Grade, 31310119010282

会社概要
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