キャリア理論15|ホールの理論とノゾミさん
キャリアに
アイディアを
働くためのアイテム
- 1. キャリアに アイディアを
- ストーリー・会社の階段から降ろされるとき
- 背景の理論・外側のモノサシから、内側のモノサシへ
- 理論の概略・プロティアン・キャリア
- ドラマと理論・会社の階段から、自分の物語へ
- Take Home Message
- セルフワーク・私のモノサシを捉え直す
- 【問い1】あなたが今、無意識に気にしている「外側のモノサシ(他人の目、社内の肩書、世間の平均など)」は何ですか?
- 【問い2】組織や世間の基準を一切無視したとき、あなたにとっての「心理的成功(これをしている時が一番納得できる、満たされる、成長を感じる)」とはどんな状態ですか?
- 次回は「ジェラットの理論とノゾミさん」
- 2. この記事を書いた人
- 3. 会社概要 -COMPANY PROFILE-
- 4. いらすと すてーしょん
働くためのアイディアって?
「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。
挑戦し続ける力
自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。
もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。


前回のクランボルツの理論を追い風に、「心理学・傾聴ボランティア体験講座」の申し込みボタンを押し、小さな一歩(冒険)を踏み出したノゾミさん。頭の中の正解探しをやめ、動くことで偶然を味方にし始めた彼女ですが、現実の時間もまた確実に進んでいきます。
今回は、組織で働く多くの人が50代後半で直面する、避けては通れない「ある制度」が彼女の心を揺さぶります。
ストーリー・会社の階段から降ろされるとき
ノゾミさんは、少しためらうように言いました。

「会社の階段から降ろされていくような、置いていかれるような寂しさが、あるのです」
出勤日の夕方、都内のオフィスの自席で、ノゾミさんはパソコンの画面に表示された
「人事面談のお知らせ」を見つめていました。
57歳。社内規程に定められた「役職定年」が、現実のものとして近づいてきていました。
これまで出版社でいくつもの企画を立ち上げ、後輩を育てながら、
粘り強くキャリアの階段を上ってきたという自負がありました。
しかしこれからは、管理職の肩書きを外れ、一人の「メンバー」として働くか、あるいは別部署に。
ふと、周りの視線が気になるようになりました。
「あの人は、もう現役を降りる人」そんなふうに思われているのではないか、と。
気にしすぎだと分かっていても、胸の奥に小さなざわつきが残ります。
「ちゃんとやってきた」はずなのに。
気づけば、階段の途中で梯子を外されたような感覚。
自分の価値が、少しずつ薄れていくような不安。ノゾミさんは、言葉にしかけて、また飲み込みました。
突き放されたような感覚。
周囲の目が気になり、自分の存在価値がすり減っていくような揺らぎの中で、
ノゾミさんは再び言葉を詰まらせていました。
背景の理論・外側のモノサシから、内側のモノサシへ
そんなノゾミさんの前に現れたのが、経営学者ダグラス・T・ホール(Douglas T. Hall)です。
ホールは、キャリアをこう捉えました。キャリアは、組織に与えられるものではなく、
自分で引き受けるものへと変わっていく。
ボストン大学の教授であったホールは、従来の「組織に所属し、階段を上り、昇進していくことが成功である」
というキャリアモデルの限界を、いち早く見抜いていました。
しかし、ホールは問い直します。環境が変われば、外側の成功は、簡単に崩れてしまうのではないか。
だからこそ必要なのは、外側の評価ではなく、自分の内側にある基準でした。
この思想の背景には、エドガー・H・シャインの理論があります。
シャインはキャリアを、役職や年収といった「外的キャリア」と、本人が意味づける「内的キャリア」に分けて捉えました。
ホールはその考えを引き継ぎながら、さらに一歩進み、キャリアの主権そのものを、
組織から個人へと取り戻す必要性を示したのです。
理論の概略・プロティアン・キャリア
ホールの代名詞とも言えるのが、「プロティアン・キャリア(Protean Career)」という概念です。
これは、環境の変化に応じて、自分自身を柔軟に変え続けながら築いていくキャリアを意味します。
「プロティアン」とは、ギリシャ神話に登場する、姿を自在に変えることができる海の神「プロテウス」に由来します。
ホールは、この神話になぞらえ、これからのキャリアは、組織に用意された道を進むものではなく、
その都度、自分で形を変えながらつくっていくものだと捉えました。
従来のキャリアは、一つの会社に所属し、経験を積み、階段を上っていくという「一本道」として考えられてきました。
しかし、プロティアン・キャリアでは、キャリアは一本の道ではなく、その時々の選択によって編み直されていくものとして捉えられます。
たとえば、
- 役職が下がっても、「学び直しの機会」として引き受ける
- 異動を「キャリアの後退」ではなく、新しい経験として活かす
- 社外活動や学びを、自分のキャリアの中心に据える
こうした選択はすべて、外側の評価ではなく、自分の納得を軸に判断している状態です。
ホールの理論の特徴は、従来のキャリア観と対比すると、よりはっきりします。
- 主権:組織 → 個人
- 成功:昇進・肩書 → 納得・成長(心理的成功)
- 能力:専門性 → 自己理解+適応力
そしてホールは、キャリアのゴールをこう置き直します。
「自分が納得し、意味を感じながら生きている状態」、これをホールは、心理的成功(Psychological Success)と呼びました。
つまりプロティアン・キャリアとは、どんな仕事に就いているかではなく、
どんな意味で、その仕事に関わっているかを自分で選び続ける生き方なのです。
ドラマと理論・会社の階段から、自分の物語へ

「役職定年は、価値の定年ではありません」
カウンセラーは静かに言いました。
「これまでのノゾミさんは、会社のモノサシで自分を測っていたのかもしれません。
だからこそ、肩書きが外れることが、すべてを失うように感じる」
少し間を置いて、続けます。
「でも、考えてみてください。役職を手放したとき、あなたの手元には何が残りますか?」
編集の経験。
人の話を聴く力。
介護を通して見つめた人間の尊厳。
そして、「心」への好奇心。
「それはすべて、会社のものではなく、あなた自身のものです」
そのとき。ノゾミさんの中で、何かがほどけました。

「…違う」
少し間を置いて、言葉を続けます。
「私は、会社の階段を上るゲームをしていたんじゃない」、
「外側がどうあっても、私の納得は、私が決める」
「私自身が、人生の主権者だったんだ」
数日後の人事面談。ノゾミさんの表情には、もう迷いはありませんでした。
「来期からのメンバー移行、承知しました。
後輩のサポートも行いながら、自分自身も新しい領域を学び直していきたいと考えています」
会社の階段から降りたわけではない。視点が変わっただけでした。
その瞬間、会社という場所は「評価される場所」から「自分の成長に使う場所」へ変わったのです。
Take Home Message
会社の階段を上ることだけが、キャリアではない。
組織の評価は、あなたの価値そのものではありません。
外側のモノサシで生きている限り、
その基準が変わったとき、あなたは揺れてしまう。
だからこそ、自分の内側にモノサシを持つこと。
あなたが納得できることは何か。
どんなときに成長を感じるのか。
その基準を持ったとき、どんな環境の変化も、あなたを縛るものではなく、成長の機会に変わっていきます。
セルフワーク・私のモノサシを捉え直す
さあ、あなたのノートを開いて、ホールの視点からあなたの「モノサシ」を捉え直してみましょう。
【問い1】あなたが今、無意識に気にしている
「外側のモノサシ(他人の目、社内の肩書、世間の平均など)」は何ですか?
(※「あの人にどう思われているか」「この年齢ならこれくらい稼いでいないと」といった、
自分以外の基準を素直に書き出してみましょう)
【問い2】組織や世間の基準を一切無視したとき、あなたにとっての
「心理的成功(これをしている時が一番納得できる、満たされる、成長を感じる)」とはどんな状態ですか?
(例:誰かの相談に乗って感謝された時、新しい知識を夢中でインプットしている時、
自分の裁量で仕事を進めている時、など)
次回は「ジェラットの理論とノゾミさん」
会社軸から自分軸へと見事にシフトし、その一歩を踏み出したノゾミさん。
しかし、選択肢が増えたことで、ノゾミさんは次の迷いに直面します。
それは、「選べるからこそ、選べない」という感覚でした。
ノゾミさんは、ノートを見つめながら、つぶやきます。

「どれを選べばいいのかしら…。一番正しいのは、どれなんだろう。」
いくつもの可能性が見えるようになった今、ノゾミさんの頭の中では、再び「正しさ」を求める計算が始まっていました。
どれが得か、どれがリスクが少ないか、どれを選べば、後悔しないか。
考えれば考えるほど、どれも選べなくなる、そんな状態に陥りかけていたのです。
論理的に考えれば考えるほど動けなくなる。
このジレンマの中で、ノゾミさんの前に現れたのが、ハリー・ジェラットです。
ジェラットが提唱したのは、「積極的不確実性(Positive Uncertainty)」という、これまでの常識を覆す考え方でした。
未来は予測するものではない。
不確実であることそのものを、受け入れ、活かしていくものだという発想です。
次回、「キャリア理論16|ジェラットの理論とノゾミさん」。
正解を探すのではなく、不確実なまま進むという選択。
論理の先にある、「直感」とどう向き合うのか。
そのヒントを、一緒に紐解いていきます。

この記事を書いた人
HCC Japan LLC
CEO
Waseda University in School of Human Sciences (e-school)
Human Informatics and Cognitive Sciences
Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry
Eli Lilly Japan K.K.
Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator
Waseda University Senior High School
Teaching Assistant (Information Technology)
Waseda University School of Human Sciences
Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)
Certified
National Licensed Career Consultant, 25072525
Medical Management Specialist, Third Grade, 31310119010282
会社概要
-COMPANY PROFILE-
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人は歴史をつくる
いらすと
すてーしょん
"いらすとすてーしょん"は独自のタッチで描いた
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