キャリア理論16|ジェラットの理論とノゾミさん
キャリアに
アイディアを
働くためのアイテム
- 1. キャリアに アイディアを
- ストーリー・損得の計算機がフリーズするとき
- 背景の理論・「正しく選べない」という前提
- 理論の概略・積極的不確実性(Positive Uncertainty)
- ドラマと理論・リスクではなく、胸の高鳴りへ
- Take Home Message
- セルフワーク・私のモノサシを捉え直す
- 【問い1】あなたが今、迷っている選択肢(あるいはこれからやりたいこと)について、純粋に「一番ワクワクする、惹かれる」のはどれですか?
- 【問い2】不確実な未来に対して、「もし、失敗してもそこから学んで楽しめばいい(積極的不確実性)」と思えるとしたら、あなたは今、どんな一歩を踏み出してみたいですか?
- 次回は、私の物語を、私自身の手で
- 2. この記事を書いた人
- 3. 会社概要 -COMPANY PROFILE-
- 4. いらすと すてーしょん
働くためのアイディアって?
「働くためのアイテム」を探究することで、変化の激しい社会の中で、私たち一人ひとりが、主体的に自身の希望や適性、そして能力を生涯にわたって発揮できるます。私たちの未来をより豊かにするために、キャリアにアイディアというエッセンスを加え、働くためのアイテムを一緒に探っていきましょう。
挑戦し続ける力
自分だけの価値観で、豊かな人生をデザインする。
もっと自分らしく生きたい!そう思える社会、そしてより多くの人々が自分自身の人生と向き合い、より豊かな人生を送るきっかけつくりをHCCジャパンはお手伝いします。


前回のホールの理論から、組織のモノサシを完全に手放し、プロティアン・キャリア(変幻自在なキャリア)を歩み始めた57歳のノゾミさん。「心理学・傾聴ボランティア体験講座」での新しい出会いや、社外のネットワーク、そしてメンバーに移行した社内での新たな役割。主体的に動いたことで、彼女の元には「これからの人生の選択肢(キルトの新しいパーツ)」が少しずつ、そして、確実に集まり始めていました。
選択肢が増えるという贅沢な状況。しかし、だからこそ彼女はまた、新たな戸惑いの渦に巻き込まれていくことになります。
ストーリー・損得の計算機がフリーズするとき
ノゾミさんは、ノートを見つめながら、つぶやきました。

「どれを選べばいいのかしら…。一番正しいのは、どれなんだろう」
休日の午後、お気に入りのカフェのテラス席で、ノゾミさんはA4のノートに、三つの選択肢を書き出していました。
①今の出版社で、若手育成の心理研修を企画する道
②社外のボランティアに深く関わり、週末の活動を続ける道
③キャリアコンサルタント養成講座に挑戦する道
どれも数ヶ月前の自分なら想像もつかなかった選択肢。
しかし、いざ「どれか一つに決める」と考えた瞬間、ノゾミさんの中で、あの感覚が戻ってきます。
頭の中の計算機が、静かに、そして大きな音を立てて回り始めます。
「①は確実だけど、でも自由度は低いかもしれない。」、
「②はやりがいがある。でも収入にはつながらない。」、
「③は魅力的。でもリスクが大きすぎる…。」。
条件、費用対効果、リスク、老後の資金。損得を合理的に計算しようとすればするほど、
どの道も一長一短に見え、どれが「正しい正解」なのか分からなくなってしまいます。
せっかく集まった美しいキルトのピースを前に、気づけば、また動けなくなっている自分がいました。
背景の理論・「正しく選べない」という前提
そんなノゾミさんの前に現れたのが、キャリア理論家ハリー・ジェラット(Harry Gelatt)です。
ジェラットはもともと、数理的に「正しい意思決定」を研究していたいわば「超・論理派」の学者でした。
データを集め、分析し、リスクと確率を計算すれば、人は最も合理的な選択ができる。
そう信じ、研究を積み重ねていました。
しかし、時代が複雑さを増し、社会や技術の変化が加速していく中で、ジェラットはある限界に直面します。
それは、未来は、思ったほど「予測できない」という事実でした。
どれだけ情報を集めても、どれだけ論理的に考えても、未来を100%正しく見通すことはできない。
むしろ、前提そのものが簡単に変わってしまう。
つまり、「正しく選ぶ」ための土台自体が、不安定だったのです。
この気づきは、ジェラットにとって決定的な転換でした。
客観的なデータや論理(左脳)だけに頼る意思決定は、予測不能な時代には通用しない。
そう悟ったジェラットは、自ら築き上げてきた「合理的な意思決定モデル」を手放し、
まったく新しい意思決定の構えを提示することになります。
理論の概略・積極的不確実性(Positive Uncertainty)
ジェラットが提唱したのが、「積極的不確実性(Positive Uncertainty)」という、
一見すると矛盾した名前を持つ理論です。
不確実であることを、「不安で避けるべきもの」と捉えるのではなく、
「だからこそ可能性が開かれている状態」として、前向きに引き受けていく。
それが、この理論の出発点です。
未来がどうなるか分からないという事実は、本来、私たちに不安をもたらします。
だからこそ人は、少しでも正しく選ぼうとして、情報を集め、比較し、合理的に判断しようとする。
しかしジェラットは、その前提そのものを問い直しました。
不確実な未来に対して、「正しい選択」を求め続けること自体が、無理なのではないか、と。
そこでジェラットは、意思決定の考え方を次のように転換します。
「客観的であれ、かつ主観的であれ(Be Objective and Subjective)」
「合理的であれ、かつ直感的であれ(Be Rational and Intuitive)」
情報を集めて考えること(客観性・左脳)は、もちろん大切。
しかし、それだけでは決めきれない瞬間が、必ず訪れる。
そのときに必要なのが、「自分がどう感じているか」という主観的な感覚です。
つまりジェラットは、「考えるな」と言っているのではなく「考えたうえで、最後は直感で選べ」と伝えているのです。
未来に正解がないのだとすれば、最後の一歩を決めるのは、論理ではなく、自分の内側にある「微かな感覚」です。
それは、言葉になりきらない違和感かもしれないし、説明できないワクワクかもしれません。
しかし、不確実な未来へ踏み出すための決定打は、いつもそこにあるのです。
ドラマと理論・リスクではなく、胸の高鳴りへ

「計算機を一度、机の引き出しにしまってみませんか?」
カウンセラーは、静かに言いました。
「損をしない選択を探している限り、脳はずっと「失敗」を探し続けます。」
少し間を置いて、続けます。
「でも、不確実であることから、目を背け、避けるべきものなのでしょうか」
「むしろ、可能性が残っている状態、とも言えませんか」
ノゾミさんは、ふと顔を上げました。

「その考え方、どこかで聞いたことがある気がして」
「そう、以前お話ししたサニー・ハンセンの『ILP(統合的ライフ・プランニング)』です。
ハンセンも、人生の不確実な移行期を受け入れ、労働や愛、学びといった人生の全体像を『キルト』のように調和させていこうと言いました。
ジェラットの言う『直感(右脳)』と、ハンセンの言う『人生のキルト(全体性)』は、地続きで繋がっているんです。
損得の計算だけで選んだパーツは、あなたの人生のキルトに美しく馴染みますか?」
ノゾミさんは目を閉じます。あの日。
電車の中で、スマートフォンの画面を見つめた瞬間。
「心」の文字に反応した、あの感覚。
損得ではなかった。
合理性でもなかった。
でも、確かに動いていたあの感覚。
ゆっくりと、目を開きます。ノートに書かれた三つの選択肢。
その中で、一つだけ、自分の内側がざわつくものがありました。

「本当は、分かっているんです。一番不確実で、一番リスクが大きいけれど…。」
「いま、一番、心が動いているのはこれです。」
ノゾミさんは、三つ目の選択肢に、丸をつけました。
「どうなるかは分からない。でも…。」この未来を、自分の直感で選んでみたいと。
ノゾミさんは、正解ではなく「自分」を選んだのです。
Take Home Message
未来の正解を、探し続けなくていい。
どれだけ考えても、不確実な未来を完全に予測することはできません。
だからこそ最後は、あなたの「直感」と「心の動き」を信じていい。
先が見えないことは、恐怖ではなく、可能性です。
どの道が正しいかではなく、どの道を、自分で意味あるものにしていくか。
それを決めるのは、あなた自身です。
セルフワーク・私のモノサシを捉え直す
さあ、あなたのノートを開いて、ジェラットの視点からあなたの「右脳(主観)」の声を聴いてみましょう。
【問い1】あなたが今、迷っている選択肢(あるいはこれからやりたいこと)について、
「メリット・デメリット」の計算を一切やめてみたとき、
純粋に「一番ワクワクする、惹かれる」のはどれですか?
(※「お金になりそう」「人に自慢できそう」ではなく、
純粋に身体がそちらに向かう感覚を直感で選んでみましょう)
【問い2】不確実な未来に対して、「もし、失敗してもそこから学んで楽しめばいい(積極的不確実性)」と思えるとしたら、
あなたは今、どんな一歩を踏み出してみたいですか?
(例:気になっている養成講座の説明会に申し込む、
体験セミナーの概要だけでも調べてみる、など)
次回は、私の物語を、私自身の手で
自らの直感を信じ、キャリアコンサルタントへの道を歩み始めたノゾミさん。
不確実な未来に飛び込んだ彼女の表情には、かつての不安や迷いはほとんど見えません。
そこにあるのは、自分の手で人生を編んでいる人の、静かで確かな充実感でした。
いま、私たちはノゾミさんという一人の女性の揺らぎを通して、
キャリア後半戦における「転機」と「選択」をともに辿ってきました。
次週、いよいよ「キャリア理論とノゾミさん」の最終回を迎えます。
サビカス、ハンセン、クランボルツ、ホール、ジェラット。
それぞれの理論は、決してバラバラに存在していたわけではありません。
それは、人生の転機に立つ私たちが、自分自身で選び、動き、意味づけていくための一つの「道具箱」でした。
これまでの理論が、あなたの人生の中でどのように響き合い、どんな「キルト(物語)」を編み上げていくのか。
キャリア理論は、あなたを型にはめるためのものではありません。
むしろ、あなた自身の物語を、あなたの手で編んでいくためのものです。
その物語を、あなた自身が少しでも好きになれるように。
次回は、そのためのメッセージを届けます。

この記事を書いた人
HCC Japan LLC
CEO
Waseda University in School of Human Sciences (e-school)
Human Informatics and Cognitive Sciences
Tokyo University Of Agriculture in Faculty of Bioindustry
Eli Lilly Japan K.K.
Sales & Marketing
Sales Manager
Sales Operator
Waseda University Senior High School
Teaching Assistant (Information Technology)
Waseda University School of Human Sciences
Teaching Assistant (Collaborative Learning and the Learning Sciences)
Certified
National Licensed Career Consultant, 25072525
Medical Management Specialist, Third Grade, 31310119010282
会社概要
-COMPANY PROFILE-
\ようこそ/
HCCジャパンの提案
歴史は人がつくる
人は歴史をつくる
いらすと
すてーしょん
"いらすとすてーしょん"は独自のタッチで描いた
フリーイラストポートレートと歴史の停車場の提供を
通じて世代を繋ぐ遺産として、そして未来への脈動を
提案します
