歴史人✖️キャリア理論|横井 弘02「偶然という贈り物」

偉人たちの人生に、次の一歩のヒントを

Series

歴史人をキャリア理論で読み解く文学家・作詞家 横井 弘編 第2回

歴史に名を残した人々も、私たちと同じように悩み、迷い、そして選択しながら人生を歩んでいました。このシリーズでは、キャリア理論というレンズを通して、歴史人の人生を読み解きます。

過去の人物を知ることは、未来の自分を知ること。彼ら、彼女たちの生き方の中には、今を生きる私たちのキャリアや人生を考えるヒントが、数多く隠されています。

文学家・作詞家 横井 弘編

文学家・作詞家 横井 弘編

新たに読み解く歴史人は、全4回でお届けする「文学家・作詞家 横井弘」。

戦争によってすべてを焼かれ、帰る家さえ失った一人の青年が、なぜその焼け跡から『あざみの歌』をはじめとする数々の名作を生み出すことができたのでしょうか。

失ったからこそ見えたもの。遠回りだったからこそ辿り着けたもの。偶然を味方にしながら自分だけの道を切り拓いていったそのキャリアを、これから4回にわたって読み解いていきます。

本シリーズは、歴史人の生涯を、キャリア理論というレンズを通して見つめ直す試みです。人物の生き方や理論との結びつきについては、HCCジャパン合同会社による独自の視点と考察を含みます。

また本企画は、「偉人たちの人生に、次の一歩のヒントを」を掲げ、歴史人物や文学家の魅力を発信する「いらすとすてーしょん」とのコラボレーション企画としてお届けします。

いらすとすてーしょん「文学の部屋|横井 弘」 illuststation196.com

第2回 偶然という贈り物思いがけない出会いが未来を変える

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『あざみの歌』は、すぐには花開かなかった

『あざみの歌』は、すぐには花開かなかった
『あざみの歌』は、すぐには花開かなかった

横井 弘 Hiroshi Yokoi 東京都出身 1926-2015
@いらすとすてーしょん

下諏訪での暮らしの中で生まれた『あざみの歌』。しかし、その詩は書かれた瞬間から広く知られたわけではありませんでした。終戦直後の日本は、誰もが生きることに必死な時代でした。詩を書いたところで将来が保証されるわけではない。作品が誰かに読まれる保証もありません。それでも横井弘は、言葉を書き続けました。

やがて東京へ戻った横井は、キングレコードに勤めるようになります。そこで思いがけない出来事が起こりました。『あざみの歌』の詞を、会社の女性社員へ何気なく託したのです。その小さな行動が、後の大きな転機へとつながっていきました。さらに横井は、作詞家・藤浦洸と出会います。藤浦はすでに歌謡界で活躍する著名な作詞家でした。横井はその門を叩き、言葉を磨いていきます。

社員との出会い。
師との出会い。
作品との再会。

振り返ってみれば、横井弘の人生は、偶然の積み重ねによって大きく動き始めていたのです。もっとも、それらは最初から計画されていた出来事ではありませんでした。むしろ横井の人生を変えたのは、予想もしなかった出会いや機会の連続だったと言えるでしょう。

第2回では、クランボルツの「計画的偶発性理論」を手がかりに、横井弘が偶然を待つのではなく、偶然を活かしながら道を切り拓いていった姿を読み解いていきます。

02

背景の理論 クランボルツの「計画的偶発性理論」

こうした横井弘の歩みを読み解く上で、大きなヒントになるのが、アメリカのキャリア理論家ジョン・D・クランボルツの提唱した「計画的偶発性理論」です。

私たちはつい、「人生は計画通りに進めるべきだ」と考えがちです。しかしクランボルツは、実際のキャリアの8割は予期しない出来事や偶然によって形づくられていると考えました。そして重要なのは、「偶然をなくすことではなく、偶然を活かすことだ」と説いたのです。クランボルツは、偶然をチャンスに変えるために必要な5つの姿勢(骨格)を挙げました。

好奇心Curiosity

新しい学びの機会を模索すること。

持続性Persistence

失敗に屈せず試みを継続すること。

柔軟性Flexibility

姿勢や状況を変えることを受け入れること。

楽観性Optimism

新しい機会は必ず訪れると信じること。

挑戦心Risk Taking

結果が不確実でも行動を起こすこと。

人生を変える機会は、計画の外側からやって来ることが少なくありません。だからこそ、偶然を恐れず行動し、訪れた機会を掴みにいくことが大切なのです。

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横井弘と計画的偶発性

この理論を通して横井弘を見てみると、非常に興味深いプロセスが浮かび上がります。

まず横井は、『あざみの歌』を書いた時点で、将来その作品が国民的な愛唱歌になるなど想像していなかったでしょう。しかし彼は、作品を書き続けました。これはクランボルツのいう持続性です。そしてキングレコードで働きながら、人とのつながりを広げていきます。これは好奇心柔軟性と考えることができます。さらに、藤浦洸という第一人者のもとで学ぶことを選びました。これは新しい環境へ飛び込む挑戦心でもありました。そして最大の偶然は、『あざみの歌』がNHKのラジオ歌謡として取り上げられ、さらに名歌手・伊藤久男によって歌われたことでした。それは横井自身にはコントロールできない出来事です。

しかし、そこへ至るまでの道のりで横井は、自ら動き、人と出会い、作品を書き続けていました。偶然は突然訪れます。けれど、その偶然をチャンスに変える準備は、自分自身でしかできません。横井弘のキャリアは、そのことを教えてくれているのです。

04

Take Home Message

私たちは人生の計画を立てます。進学、就職、転職、結婚。

しかし振り返ってみると、本当に人生を変えた出来事は、計画していたことよりも、思いがけない出会いや偶然だったということが少なくありません。大切なのは、未来を完璧に予測することではありません。「偶然が訪れた時、それを掴める自分でいること」です。

今日の出会い。
何気ない会話。
ふと始めた学び。

それらが数年後、思いもよらない未来へつながることがあります。偶然は待つものではありません。行動する人の前に現れる贈り物なのです。

05

次回は

下諏訪で生まれた『あざみの歌』は、数々の偶然を経て全国へ広がっていきました。しかし横井弘の本当のすごさは、一曲のヒットで終わらなかったことにあります。

五年の歳月を経て花開いた『あざみの歌』。そしてその後も、『哀愁列車』『おさらば東京』『川は流れる』『下町の太陽』など、時代を代表する数々の名曲を送り出していった横井弘。なぜ彼は、長い年月にわたって「言葉を書く人」であり続けることができたのでしょうか。

次回、「第3回 五年越しの光」。
シャインの「キャリア・アンカー」を手がかりに、横井弘の人生を支え続けた揺るがない価値観を読み解いていきます。

この記事を書いた人

現在
2022年5月〜

HCC Japan LLC.

代表社員

2023年4月〜

Waseda University, School of Human Sciences (e-school)

Human Informatics and Cognitive Sciences

2023年10月〜2025年2月
Teaching Assistant, Waseda University Senior High School (Information Technology)

2025年4月〜7月
Teaching Assistant, School of Human Sciences (Collaborative Learning and the Learning Sciences)
これまでの歩み
1996年3月
Tokyo University of Agriculture, Faculty of Bioindustry
1996年4月〜2022年3月(26年間)
Eli Lilly Japan K.K.

Sales & Marketing / Sales Manager / Sales Operator

保有資格

国家資格キャリアコンサルタント (National Licensed Career Consultant) 登録番号25072525
医療経営士 (Medical Management Specialist Third Grade) 3級認定登録番号31310119010282